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2005年06月15日(水曜日)

レムニスケート5等分の計算 [ 数学 ]

ガウスが円周の等分に引き続いて,レムニスケートの等分を試み,それがきっかけで楕円関数の一般理論を発見したことは良く知られている。また,ガウスが「数論研究」で円周等分と同様のことが,積分 dx 1 -x 4 に関係する関数(つまりレムニスケート関数)にも適用できると,さりげなく示唆したことが刺激となり,アーベルによる楕円関数の発見および等分理論,さらにはアーベル方程式につながったことも,良く知られている。

そうなんだけど,歴史の本や通俗解説書には,お話しか書いてない。一方,数学書の方は,入門書であっても,いきなり楕円曲線や虚数乗法の一般論になってしまい,それらがどのような経緯で発展してきたのか,具体的にはなかなか書いてないように思う。

ささやかではあるが,そんな状況を補うような本を見つけた。

見つけたといっても自分の本棚で。買ってはみたが,ちゃんと読んでなかったことが,ばればれだね(苦笑)。

AMSでロシアの数学書から選んで翻訳しているシリーズがあるのだが,その中の一冊。Prasolov, Solovyev の共著で,"Elliptic Functions and Elliptic Integrals" (楕円関数と楕円積分)というタイトル。第5章が「レムニスケートの分割に関するアーベルの定理」という題で,ガウスによる円周17等分(正17角形の作図)から始まって,具体的な計算も含めて,理論がどのように進展したのか分かるように解説してあって楽しい。もちろんすべての計算が self-contained で書いてあるわけではなく,ギャップもあるのだが,それらは普通の教科書で補うことができる。

レムニスケートの話は,弧長の積分表示とその逆関数としてのレムニスケート関数 f (x) の導入に始まり,加法定理,倍角公式などと続く。三角関数とパラレルになっていることが分かる。レムニスケートを5等分するには,方程式 f (5x)=0 を解くのだが,素数5がガウスの複素整数の範囲で, 5 =(2+i)(2-i) と分解されることに基づき, ( 2+i) 倍角公式と ( 2-i) 倍角公式を作って,25次方程式をより低次の方程式に帰着させ,結局は平方根のみで解けることが示されている。ここまで書いてある本はなかなかないのでは?というか,普通は自分でやれ,と言われるかも(苦笑)。

このような計算が可能であるのは,レムニスケート関数の場合 f (ix)=if(x) という等式が成り立つからだ。これがある故に ( 2+i) 倍角の公式などを作ることができる。これこそが「虚数乗法」の最初の例だったりするのだが,その意味では,この計算そのものが(けっこう面倒なんだけど・・・)もっと知られて良いのになあ,と思う。

さて易しい話はここまでで(笑),このあと一般論に移る。レムニスケートの等分方程式が代数的に可解であることの証明。アイゼンシュタインの証明と,現代風のローゼンの証明の概略が書いてあるが,現代風のは,やはりかなり抽象的だなあ・・・と。

投稿者 sukarabe : 2005年06月15日 08:08

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コメント

この本、読んでみたいです。
内容的には知っているはずなので、自己レベルのチェックにもあるので。

投稿者 calc : 2005年06月23日 08:58

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