« p進数 | メイン | バカラック久々のソロアルバムだが »

2005年10月08日(土曜日)

ストランド誌の難問コーナー [ 数学 ]

以前,ラマヌジャンの伝記「無限の天才」で見つけた面白い問題。210ページにある。 何でもイギリスの大衆紙「ストランド」の1914年12月号の「難問コーナー」の載った問題らしい。 ストランド・マガジンと言えばシャーロック・ホームズもこの雑誌じゃなかったっけ?

ともかく,その問題は次のようなもの。時節柄,ドイツ軍とか出てくるが,まあ,それはそれ。

「先日のことだが」とウィリアム・ロジャースは宿屋の暖炉に集まった村人たちに語りかけた。「ドイツ軍が焼き払ったベルギーのルヴェンのことで,ある旦那と話していたんだ。旦那が言うには,自分はその町を知っている。そこに友人が住んでいてよく厄介になっていたんだ,と。その友人の家は1番,2番,3番,・・・と家番号のついた大通りにあるんだが,驚いたことに,やつの家から右にある家の番地を足した数と,左にある家の番地を足した数が同じになるんだな。この通りには,50軒以上の家,といっても500軒以下だが,の家が並んでいる。この話を牧師さんに言うと,鉛筆をすらすらと走らせて,ベルギーの友人の番地をあてちまったんだ。はて,どうやったのね。」

さて読者はお分かりだろうか。

さて,友人から「君にお誂えの問題だよ」と言われたラマヌジャンの頭には直ちに一般解を与える一つの連分数が浮かんだという。「自然に浮かぶ」あたりがラマヌジャンの常人とは違うところだが,それはおいておいて,凡人なりに解いてみよう。

ラマヌジャンの頭の中はさすがに分からないが,この程度の問題なら何とか理解はできる。 大通りにn軒の家があり,友人宅がm番地とすれば,
1+2+3+\cdots+(m-1)=(m+1)+(m+2)+\cdots+n
であるから,整理すると
2m^2=n(n+1)
となる。ここで,nn+1には共通の素因数がないことに注意すれば, nが偶数なら,n+1, \frac{n}{2}が共に平方数であり,nが奇数ならば, n, \frac{n+1}{2}が共に平方数となる。この平方数を x^2, y^2 とおけば, 方程式
x^2-2y^2=\pm1
が得られる。これは所謂ペル方程式であり,その一般解は\sqrt{2}の連分数展開から求められるのだった。ラマヌジャンの示した連分数はおそらく\sqrt{2}のものではなく,直接\frac{n}{m}を与えるものなのだろうが,それは一体どうすれば求められるのか?

ともあれ,この問題は解けた。50\leq n\leq 500なる範囲では答えは一つに限る。 それは
1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2}}} = \frac{17}{12}
から出るもので,x=17, y=12, 従って,n=288, m=204となるのだった。

投稿者 sukarabe : 2005年10月08日 20:22

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://njet.oops.jp/cgi/mt/mt-tb-alt.cgi/803

コメント

コメントしてください

comment spam対策のため,名前とメールの入力が必須になっていますが,メールアドレスは公開されません。Web SiteのURLは任意です。Type Key IDをお持ちの方はType Keyをサイン・インしてくださってもいいです。




保存しますか?