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2005年10月08日(土曜日)

p進数 [ 数学 ]

p進数が数論で重要であることをずっと知らなかった。そもそも学部で数論の授業はなかったと思う。初等整数論は代数学の初歩(モジュールや群・環など)に含まれていたが,数論としての講義があった記憶がない。皆適当に自習していたようだった。門外漢としては,デデキント環とか付値論とかを通して何となく代数的数論のまわりをうろついていただけ。ヘンゼルが関数論におけるベキ級数のアナロジーとしてp進数を考えたらしいことぐらいは,おぼろげに知っていたが,そういうものもあるという程度で,主流はデデキントのイデアル論だと思っていた。

最近の数論の入門書をいろいろ見ると,p進数が知らないうちに主役(?)となっているので驚くのであった。ふーむ。

そういえばセールの「数論講義」でもp進体が解説してあったなあ。イデアルも代数体もなく,不思議な数論の本だと思っていたが,今になって思えば,あちこち合点がいくのであった(苦笑)。

本棚に Cassels の Local Fields という本がある。ずっと前に買ったのだが,未読のまま。最初のイントロを読んでみたが,これが意外に面白いことに初めて気付いた。付値の定義のあと,応用として von Staudt, Clausen の定理なるもののp進数による証明が載っている。この例が素晴らしいのだ。この先を読んでみようという気に十分なる。というか,付値論だけ延々とやられても退屈なのだが。

von Staudt, Clausenの定理というのは,ベルヌーイ数の分母を決定するもので,正確なステートメントは次の通り。 「ベルヌーイ数B_n(n-1)を割り切る素数qに対する\sum\frac{1}{q}の和
W_n=B_n+\sum_{q}\frac{1}{q}
は整数である。」 証明はいろいろあるらしいのだが,ここで紹介されているのは,p進付値(による距離) |W_n|_pを考えたとき,すべての素数pに対して,
|W_n|_p \leq 1
となるというもの。 |W_n|_p \leq 1とは,W_nの分母がpを含まないということだから,それがすべての素数pで成り立つには整数しかないという論法。 そして,これは孤立した結果ではなく,最近の研究の出発点でもあると書かれている。

最初にこんなものを見せられたのでは読まないわけには行かない(笑)。少し読んでみようかなと思う。できれば学部生の頃に,こういう具体例からp進数に馴染みたかったなあと思う。そうすれば,p進数体が奇異なものではなく,有理数体の完備化として実数体や複素数体と同等の地位を占めるものである,ということが理屈ではなく実感として感じ取ることができたのではないか,と思う。

投稿者 sukarabe : 2005年10月08日 15:12

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