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2005年11月23日(水曜日)

接空間 [ 数学 ]

珍しく(?)数学が書いてある日記を発見した。
ユークリッド空間で起こる接空間、余接空間との同一視(前編) : 南の島で思うこと−タスマニアにて− -北国tv

多様体の接空間の定義は誰しもが一度は悩むところかもしれない。\mathbb{R}^nに含まれる多様体,例えば3次元ユークリッド空間内の曲面などでは,接平面は直感的に理解できる。しかし,そのままでは一般の多様体には適用できない。

自分の経験では,3年で多様体の授業を受ける前に,教養の段階で(S先生による)多変数の微積分の授業があった。あったのだが,何と接ベクトルの定義は微分作用素によるものだった(笑)。ちなみに3年の多様体の授業(O先生)は超曲面の話から始まった。おい,順序が逆だろう(苦笑)。手元にS先生の講義ノートがないので確認できないのだが,このような形で接ベクトル・接空間を導入したのは,シュバレー(Chevalley)の Theory of Lie Groups が最初という話だったと思う。n次元多様体の接空間は n次元の線型空間であれば何でもOKというわけにはいかない。そのときには理解していなかったが,曲面の場合の自然な拡張になるためには,いわゆる「自然な同型」になってないとダメ。具体的に言えば,多様体の局所座標系をとりかえた場合の接空間の座標の変化が,\mathbb{R}^nに埋め込んだ場合と同じになっている(つまり同種のテンソルになる)必要がある。これも当時は知らなかったが,Chevalleyがこの本を書いた頃は,一般の多様体の定義がきちんとなされていなかったようだ。リーマン面がWeylの本できちんと定義されたように,多様体の基礎付けもChevalleyの本でなされたわけだ。それに伴って,それまでの添え字だらけのテンソル解析は座標を用いない intrinsicな形に変身した。そういう背景を知らないと,このような定義を受け入れることは心理的に難しいのではないか。

当時 Chevalleyの本も読んだのだが(といっても最初の多様体の定義の所だけ),接ベクトルの定義には納得できなかった記憶がある。ある程度の納得ができたのは,服部晶夫先生の岩波全書の本(これも手元にないのでタイトル忘れたけど,単に「多様体」だったかな?)を読んでから。接ベクトルをその方向に沿った「方向微分」と関連づける説明があったと思う。この説明が一番良かったかなと思う。

今から思うと,こういう定義の妥当性とか必然性とか,そういった説明がもっと欲しかった。もっとも何でもすぐに飲み込める人もいるから,そういう人にはまどろっこしいのだろうが・・・。

投稿者 sukarabe : 2005年11月23日 09:46

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多様体というものを初めに学ぶとき、「空間の中の曲面」のようなものをイメージしませんか? また接平面というとき「空間の中の曲面に接する平面」をイメージしませんか?... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年11月30日 11:27

コメント

TB有り難うございます。
僕も接ベクトルが微分作用素ってのには、ギョッとしました。
これからも時々お邪魔します。

投稿者 Ima@Tas : 2005年11月23日 16:28

Ima@Tasさん。
こちらこそ,昔悩んだことを思い出して,楽しく読ませていただきました。

投稿者 sukarabe : 2005年11月23日 18:29

はじめまして。

>何と接ベクトルの定義は微分作用素によるものだった(笑)。

これに触発されて昔の失敗談をトラックバックいたしました。

なお、当方の不手際で4回もやってしまったので、まことに申し訳ありませんが、3回分は削除してくださいませ。

今後とも宜しくお願いします。

投稿者 mathesis : 2005年11月30日 11:37

mathesisさん
記事を楽しく読みました。なかなか挑発的ですね(笑)。
こちらこそよろしく。
そうそう,一様収束ではお疲れ様!(大笑)。

投稿者 sukarabe : 2005年11月30日 15:18

>なかなか挑発的ですね(笑)。

いやいや、中身は幼稚なもんです。
sukarabeさんが「多様体の局所座標系をとりかえた場合の接空間の座標の変化が,R^nに埋め込んだ場合と同じになっている」とさらっと書いてるところを、思いっきりゴリゴリ計算したわけで。

これが国立大と私立大の差ですかね(爆)

>そうそう,一様収束ではお疲れ様!(大笑)。

うーむ、恥ずかしい(潜)。
連続といえば、まだ一年坊主の頃
「xが有理数だと不連続だが、xが無理数だと連続な関数」
というのをみて
「これってまるっきり不連続じゃん!」
とおもったもんですが。

投稿者 mathesis : 2005年11月30日 17:02

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