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2005年11月01日(火曜日)

WeilによるKummer全集の序文 [ 数学 ]

Kummer全集は1975年にやっと出版されたとのこと。Weilが序文を書いている。その冒頭部分を引用。

The great number-theorists of the last century are a small and select group of men. ... Most of them were no sooner dead than the publication of their collected papers was undertaken and in due course brought to completion. To this there were two notable exceptions: Kummer and Eisenstein. Did one die too young and the other live too long? Were there other reasons for this neglect, more personal and idiosyncratic perhaps than scientific? Hilbert dominated German mathematics for many years after Kummer's death [in 1893]. More than half of his famous Zahlbericht (viz., parts IV and V) is little more than an account of Kummer's number-theoretical work, with inessential improvements; but his lack of sympathy for his predecessor's mathematical style, and more specifically for his brilliant use of p-adic analysis, shows clearly through many of the somewhat grudging references to Kummer in that volume.

要約すればこんな感じか?
「19世紀の偉大な数学者(数論に業績を残した)の多くは死後直ちに全集が企画・出版されたが,クンマーとアイゼンシュタインの全集は何故か出版されずじまいであった。科学とは関係のない個人的事情,イデオロギー的理由があったのだろうか?クンマーが1893年に亡くなったあと,ヒルベルトがドイツの数学界を長年に渡って支配してきた。ヒルベルトの有名な「数論報文」は内容においてはクンマーの業績に加えるものがほとんどないが,ヒルベルトには先駆者であるクンマーの数学上のスタイルと彼の素晴らしいp進解析に対する敬意が感じられない。それは「数論報文」の中でのクンマーへの言及がいかにも渋々であることによく現れている。」
英語苦手なので,誤読しているかもだが。

まあヒルベルトはデテキントのイデアルを基礎としたわけだし,クンマー流のうさんくさい(?)理想数なんか無視(笑)したいのかも知れなかった。当時は,Dedekind-Hilbert流のイデアルが支配的で,一方のKummer-Hensel-Hasse のp進解析の派閥(?)は傍流というか,まあそんな感じだったらしい。ヴェイユは歴史にも造詣が深いので,Eisenstein, Kronecker, Kummer あたりが埋もれてしまっているのが面白くないのだろう。実際,Eisensteinの楕円関数の理論なんて,一様収束とかの厳密性を別にすれば,ほとんどワイエルシュトラスの「ペー関数」と同じ事をずっと前にやっているのだが,何故か知られていない。アイゼンシュタインは早死にしたのが原因かも知れないが,クンマーは長生きしすぎたからか,とは冗談がきつい。

そうそう,本屋でヴェイユの「アイゼンシュタインとクロネッカーによる楕円関数」を見た。2500円。うちにある原書より安くて日本語になっているのが恨めしい(笑)。

投稿者 sukarabe : 2005年11月01日 16:44

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