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2005年12月06日(火曜日)

イプシロン・デルタ(1) [ 数学 ]

イプシロン(ε),デルタ(δ)というのはギリシャ文字だが,数学では所謂イプシロン・デルタ論法なるものがある。例えば,関数f(x)x=x_0で連続であることの定義は次のようになる。
どんな小さな正の数\epsilonに対しても「|x-x_0|\lt\delta ならば |f(x)-f(x_0)|\lt\epsilon が成立する」ような\delta\gt 0を選ぶことが可能であれば,x=x_0においてf(x)は連続であると定義する。

長い間,この定義はコーシー(Cauchy)が与えたものと思っていた。ところが最近 calc氏の記事 に関連して手近にある本を読んでいるのだが,事はそう単純ではないかもしれない。少なくともこの形で定式化したのはワイエルシュトラスなのかもしれない。

極限や連続のきちんとした定義はコーシーによるものだということに関しては大丈夫なのかな?数学史関係の本はあまり持ってないので,こういうときは困る。とりあえず本棚から探し出してきたのは Dieudonné 編の「数学史 1700ー1900」の3巻本。2巻目の第6章「解析学の基礎」(Pierre Dugac)を読んでみた。

「解析学教程」(1821年)において,コーシーはそれまで曖昧に使われていた「無限小」や「無限級数」といったものに確固たる基盤を与えたとされている。例えば「無限小」とは「0を極限とする数列(あるいは関数)」のことと定義する。それまでの「どんな正の数よりも小さい特殊な量」という曖昧な無限小を捨てて「極限」を主軸に据えたのが最大の貢献と言えるだろう。

さて,連続性の定義は次のように与えられているらしい。「関数f(x)が点xにおいて連続であるとは,差f(x+\alpha)-f(x)の絶対値が\alphaのそれとともに限りなく小さくなること」うーん,これでは限りなく小さくなることの定義はどうするんだ(笑)。

投稿者 sukarabe : 2005年12月06日 16:08

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コメント

トラバありがとさんです。
このテーマについては、いずれ詳しく書こうかと思います。

コーシーの果たした役割は、収束と連続の判定基準を明記した微積分の教科書を書いた、という、事実だと思います。
(これが、これ以降の解析学全般の発展につながったということも、コーシーの果たした重要な役割だったかと)

この記述が、イプシロンーデルタ(論法)だ、という人もいるだろうし、そうじゃない、という人もいるだろうし。

でも、自分でいろんなことを調べたり、考えたりすることは、数学史家に頼ること以上に、大切なことだと思いました。

投稿者 calc : 2005年12月08日 14:33

できれば自分で原典にあたりたいのですが,そこまではなかなかできませんし,数学史の専門家になりたいわけでもないですし。
しかしcalcさんの記事をきっかけにいろいろと調べて楽しい時間を過ごしています。感謝!

投稿者 sukarabe : 2005年12月09日 00:31

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