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2006年11月19日(日曜日)

大平修三九段の「名局鑑賞室」 [ チェス・囲碁など ]

大平修三「名局鑑賞室」

日本囲碁大系を始めとして江戸時代から明治初期までの打ち碁の解説本はいろいろ出ているが、大平修三九段著の「名局鑑賞室」は出色の出来だと思う。もちろんワタシのような素人な内容についてどうこうは言えないのだが、解説の丁寧さといい、率直な感想といい、まるで直に(テレビ解説か何かで)大平九段の解説を聞いているかのような親近感があるのだ。はしがきに、「古典の碁を何局か選び、現代的な立場から批評を加え、初、中級者にも理解できるように解説するという試みを何年か前から頭に描いていました」とあるように、ワタシのように初段に届くか届かないかといったレベルでも、そこそこ楽しめる。とかく古碁の解説は上級者向けとなりがちなので、これは非常にありがたい。

率直だなあと感じるのは、例えばはしがきの次の言葉。「また一般に名局と呼ばれながら、私の判断で載せなかったものもあります。たとえば耳赤の一局として有名な幻庵・秀策局は序盤の黒の打ち方がひどく、この二人を研究するなら別の碁がいいと思いますし、吐血の一局として名高い丈和・因徹局は問題が多すぎて私の手に負えません。」

この時代の碁は今と違ってコミがないため、黒(先番)が有利である。だから段位よりも力がある若手の先番をベテランが抑えるのは容易なことではない。とかく勝ち負けといった結果だけが優先するのであるが、大平九段の解説にはその辺りへの斟酌も垣間見えて興味深い。

今読んでいるのは、天保13年(1842年)5月の本因坊秀和 対 井上(幻庵)因碩の一局。先番秀和の6目勝に終わるのだが、終盤での幻庵の持ち込みがなければジゴ一、おそらくは黒1目勝に終わるという。持ち込みになってしまうのだが、敵陣深く打ち込んだ後の死活の手どころはワタシのレベルでは難しい。難しいのだが、詳しい変化図と共に丁寧に解説されているため、なるほどなるほどと、深遠なプロのレベルをちょっとだけでも知ることができ、とても楽しい。

投稿者 sukarabe : 2006年11月19日 14:48

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