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2007年01月04日(木曜日)

Pierpont氏の複素関数論教科書 [ 数学 ]

pierpont.html

もう随分前になるが、神保町でえらく古い(1914年の発刊)複素関数論の教科書を買った。いまさら入門書を買うこともないと思いつつも、楕円関数についてかなり丁寧に書かれていたので、ちょっと気に入ったのであった。今回、楕円テータ関数の復習というか再履修(笑)というかをするに当たって、本棚から引っ張り出してきた。

著者は James Pierpont という人。さして有名人でもないと思うが、念のため検索してみると、この教科書以外にはネットでは引っかからない。ふーむ。しかし、この本自体が Dover Phoenix Editionとして復刻されている ことを発見。さらにミシガン大学のHistorical Math Collectionにもあった

それにしても、日本の関数論の入門書は判で押したように、コーシーの積分定理、留数定理あたりで終わってしまう。そんな教科書が無数(?)にある。そこから先が面白いのに~。楕円関数を解説してあるものはほとんどなく、あったとしてもワイエルシュトラスの\wp(ペー)関数をちょっとだけ。まあ、ページ数とかいろいろ理由はあるのだろうが。それに比べると外国の教科書、特に20世紀初頭の古い本は詳しくて楽しい。

Pierpont氏の教科書で気に入っていることの一つが天下りが少ないこと。例えばWhittaker-Watsonあたりだと、ヤコビの楕円関数をテータ関数の商として定義してある(笑)。まあね、結局は同じになるんだけどさあ、それはちょっとないんじゃないの?と言いたくなる。その点、Pierpont氏は良い。ヤコビの楕円関数を第1種楕円積分の逆関数として定義(ここをちゃんとやるにはリーマン面とかいろいろ面倒ではあるのだが・・・)したあと、アーベルによる無限積展開を示し、この導き方は厳密ではないのだが・・・しかし、これに示唆されて、次のような関数を考える・・・と、テータ関数を導入している。このようなゆったりした講義調の教科書を書くのは案外と大変であるから、多くの著者が簡潔で厳密で天下りの書き方に走ってしまうのは、何となく分かる。分かるんだけどね。

投稿者 sukarabe : 2007年01月04日 13:10

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