« Pierpont氏の複素関数論教科書 | メイン | 万年筆のお掃除 »
2007年01月06日(土曜日)
船頭多くして・・・ [ 数学 ]
楕円関数をざっと復習して例の恒等式の証明まで進みたいのだが、天下りの定義が嫌いな性分が災いしてなかなか進まない。いろいろ読んだ結果、天下りではあるがテータ関数をまず定義して、それからスタートするのが最も効率的であり、論理的にもすっきりすることは理解できた。しかしなあ・・・その道は嫌いじゃ(笑)。少なくとも、テータ関数がどのように発生するのか、ある程度自然な議論が欲しい。うーむ。
ということで鋭意勉強中なのだが(笑)、一冊ではまかないきれず数冊の参考書を比較検討しながら進めているので、これがなかなかに面倒。ちなみに関数論を一切使わないで歴史的に進めようとしているわけではない。関数論は使うが、動機を大切にしたいということなのであった。あー面倒だ(苦笑)。それでは寸評。
-
安藤四郎 「楕円積分・楕円関数入門」
入門書であり、非常に丁寧に書かれていて読みやすい。最初は実変数で議論しているが、複素変数になってからは、改めてリーマン面上での楕円積分を考え、その逆関数として sn(u) などを導入している。テータ関数は sn(u) の極を零点とする整関数を作ろう、という方針で導入されていて、これはこれで良いかとも思う。こうして書いていて思うのだが、この本の進め方って良いかも。これ一冊しか手元になければ迷いが無くて良かったかもだ(苦笑)。
-
Pierpont : Functions Of A Complex Variable
これは関数論全般の入門書であるが、後半に楕円関数の丁寧な入門がある。テータ関数の導入は、sn(u)の無限乗積展開から始めている。ただし、無限乗積のところは、アーベルはこんな風にして導いたと方針のみのお話。まあ、動機付けだからこれで良いのかな?
-
Koenigsberger : Vorlesungen über die Theorie der elliptischen Functionen, nebst einer Einleitung in die allgemeine Functionenlehre, Teubner (1874)
ドイツ語なので数式以外が分からない(苦笑)のだが、眺めてみたところ、なかなか良さそう。非常に長いのだが、305ページから327ページまでの20ページ余りを読めば、当面の目標は果たせそう。上のPierpontの本で省略されている sn の無限乗積展開を導いている。
-
河田敬義「ガウスの楕円関数論」(上智大学数学講究録 No. 24)
これは高木貞治の「近世数学史談」にあるガウスの楕円関数発見の話を丁寧にフォローしたもの。ちょっと独特ではあるが、関数論の一般論を使わずに初等的変形で2重の無限積を1重の無限積さらに無限級数に変換する議論は面白く参考になる。
-
Walker : Elliptic Functions: A Constructive Approach
これもちょっと変わった入門書。Weilの Elliptic Functions according to Eisenstein and Kronecker に示唆されて、アイゼンシュタイン流の無限級数による楕円関数の導入を実際に行ったもの。絶対収束しない無限級数を扱うのでちょっと注意が必要だが、関数論をあまり使わずに初等的に議論できる。テータ関数の章は、2重無限積から無限級数への変換の扱いで参考になる。
投稿者 sukarabe : 2007年01月06日 10:12
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://njet.oops.jp/cgi/mt/mt-tb-alt.cgi/1355
コメント
コメントしてください
comment spam対策のため,名前とメールの入力が必須になっていますが,メールアドレスは公開されません。Web SiteのURLは任意です。Type Key IDをお持ちの方はType Keyをサイン・インしてくださってもいいです。