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2007年01月28日(日曜日)

連分数とフェルマーの定理 [ 数学 ]

ここでいうフェルマーの定理というのは、4で割って1余る素数は2個の平方数の和で書ける、というもの。比較的初等的な証明をHenry J. S. Smithが与えていると、どこかに書いてあったので調べてみることに。

H. J. S. Smithの全集第1巻Internet Archiveにあるので、1855年の論文を読もうとしたのだが、ラテン語のため挫折。2ページの短いやつなので山勘で読めなくもないのだが、ロジックの肝心な部分がやはり駄目だった。素数pに対して、\frac{p}{m}の連分数展開を考えるというもの。一体どうするのやら。

いろいろ調べてみると、クリスタルの代数学の教科書(2巻本)に証明が載っているらしいので、ChrystalのAlgebraを探すのだが、Internet Archiveにも、MichiganにもCornellにもない。専門書じゃなく、(19世紀末ごろの)高校の教科書みたいなものだからかなあ。ともあれ、http://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp36404 なる謎の(?)ページに辿り着き、何とかPDFをダウンロード。ここもアーカイブか何かだろうか?

クリスタルの第2巻に、確かにSmithによる証明というのが載っていた。具体例もついていて理解できる。なるほど!p=4n+1の素数に対して、分母m\frac{p}{2}より小さい、つまり2n以下のものをすべてとり、2より大の既約分数\frac{p}{m}を考える。これら2n個の既約分数を連分数展開すると、p2n通りのcontinuantとして表される。continuantというのは、連分数を普通の分数に戻したときにできる式のこと。例えば、
a+\frac{1}{b+\frac{1}{c}}=\frac{abc+a+c}{bc+1}
なので、
[a,b,c]=abc+a+c, \quad [b,c]=bc+1
などと書き、これをcontinuantと呼ぶ。これに関しては幾つかのきれいな関係式がなりたつのだが、それらは初等数論(高木貞治の初等整数論講義など)の本にあるので、ここでは省略。

このcontinuantの性質として、変数を左右逆転させても値が同じというものがある。従って、p
p=[a,b,c,d]
と表されたとすれば、
p=[d,c,b,a]
も成り立つ。この様な表現が全部で2n通り、つまり偶数個あるのだが、そのうち、p=\frac{p}{1}に対応するp=[p]という左右対称なものが1つあるのだから、もう一つ左右対称な表現が存在するはずだ、というのがポイント。この左右対称なcontinuantからpが2個の平方数の和に表されることが示される。 p=[a,b,c,c,b,a]ならば、
p=[a,b,c,c,b,a]=[a,b,c]^2+[a,b]^2
というように。このあたり、continuantに関する少し詳しい知識が必要になってくる。

具体例を一つ。p=13の場合、m=5に対して
\frac{13}{5}=2+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{2}}}
となるので、
13=[2,1,1,2]=[2,1]^2+[2]^2=3^2+2^2

うーん、確かに初等的ではあるが、連分数論の初歩を学んでいないと、ちょっとつらいかな?今のカリキュラムだと数学科でもあまりやらなそうな古典的分野ではあるな。しかし、非常に面白い内容で、満足。

投稿者 sukarabe : 2007年01月28日 15:35

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