2007年06月18日(月曜日)

統計力学始めました [ 物理 ]

釧路に行くとき、飛行機の中で読もうと、久保亮五「統計力学」(共立全書)を鞄に入れていった。量子力学のきっかけとなったプランクの空洞(黒体)輻射の式を導く過程がどうしても気になったので、ここを何とかしないと先に進み気がしなかったのだ。こういう風にひっかかるのは、挫折の元なんだがなあ(苦笑)。

朝永「量子力学」の付録にあるボルツマンの原理の説明は物理的なもので、ワタシには敷居が高いというか、まだ準備不足であまり理解できなかった。それに対して、久保亮五さんの入門書では、数学的な取り扱いで、これならなんとかなりそうだと思ったのだった。

概略は次の通り。気体分子のように、極めて個数が多い一つの系(例えば容器の中の気体分子全体とか)を考える。全体のエネルギーEは一定で、プランクが仮定したように、単位エネルギー\epsilon_0の整数倍E=M\epsilon_0とする。一定のエネルギーEN個の分子に分配されるのであるが、それって要するに、整数MN人に分配することと同じである。やったー、これなら数学だから分かる(笑)。分子のエネルギーとしてゼロも許されるから、これはいわゆる重複組合せになり、分配の仕方の数は、
{}_N{\rm H}_M=\frac{(M+N-1)!}{M!(N-1)!}
となる。特定の分子を考えたとき、そのエネルギーがx\epsilon_0である場合の数は、そのうちの
_{N-1}{\rm H}_{M-x}=\frac{(M+N-2-x)!}{(M-x)!(N-2)!}
である。よって、特定の分子のエネルギーがx\epsilon_0である確率p(x)が計算される。MNが極めて大きいことに注意して近似すると、
p(x)=\frac{N}{M+N}\left(\frac{M}{M+N}\right)^{x}
となる。つまり、p(x)=Ae^{-cx}の形。これで、特別な場合だが、ボルツマンの原理に出てくる指数関数の説明が出来る。

考えてみると、トータルのエネルギーが一定だから、特定の分子のエネルギーが大きくなる確率はとても小さい。そう考えると納得できる結果だ。

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2007年06月10日(日曜日)

朝永振一郎の「量子力学」 [ 物理 ]

朝永振一郎「量子力学 I」みすず書房

ノーベル物理学受賞者の高名な研究者による有名な本だが、実はちゃんと読むのはこれが最初。何年か前に読もうと思ったとき、たしか第1巻が買えなかったので、てっきり絶版になったと思ってあきらめていた。先日、ジュンク堂で見かけたのでさっそく購入。例の「Aha! 量子力学がわかった」で準備運動していたのが良かったのか、なんとか読めそうな予感。何のことは無い、黒体輻射(空洞輻射)の話から始まっている。「Aha!・・・」の方でちゃんと書いてないことも含めて、かなり詳しく書いてあるみたいだ。もっともその分、難しくはなっているが。案の定、さっそく、統計力学の話で頓挫しそう(苦笑)。いやいや、少しぐらい分からなくても先に進むことが大切だと思って、読み進めてみよう。統計力学の方は、久保亮五さん(こっちも碩学だよ~笑)の本(共立全書)でなんとか補えそうだし。

話は変わるが、みすず書房の本の出来栄えは相変わらず素晴しい。装丁も美しく、活字は精興社のもので、数式の組み方も良い (岩波も以前はそうだったが)。古き良き伝統というか、日本の活版印刷がいかに高水準であったか、思い知らされる。この精興社の活字が \TeX (テック)で再現できたら、どんなに素晴しいだろうか。

投稿者 sukarabe : 23:16 | この記事の固定URI | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年05月30日(水曜日)

量子力学に目覚めたかも [ 物理 ]

Aha! 量子力学がわかった!

物理学は興味はずっと持ちながら、挫折の連続、あー僕には分からないなあ、と嘆息するのであった。なかでも量子力学は挫折も挫折、とっぱじめから跳ね返されて、それっきりであった。というか、解析力学のハミルトン・ヤコビの方程式で、変数を偏微分作用素に置き換えろ、と天下りに言われてもなあ、と。これで納得する人って居るのだろうか。

そんな感じで、あきらめていた量子力学なのであるが、先日、通俗も通俗、超入門書(?)とでも言うのだろうか、そんな本を見つけた。「Aha! 量子力学がわかった!」という、いかにもインチキくさいタイトル(失礼!)の本がそれ。以前だったら、まず絶対に購入しなかったであろう種類の本だ。大体、こういう通俗書で理解できるはずがなかった。しかし、ままよ、と立ち読みしてみると、意外にも、これがなるほど~と納得のできる流れになっているのだ。黒体の輻射に関するプランクの先駆的業績から始めて、古典力学のアプローチが如何にして矛盾し、エネルギーがデジタルであるという不可思議な仮定が如何に正しい結果を導くかということが、親しみやすい口調で説明される。グラフや図が多いのもグッド。楽しい挿絵など、飽きさせない工夫もそこかしこにみられ、所謂学術書とは親しみやすさが全然違う。イカサマではなく、キチンとした話をこういう風に敷居を下げて説明することって可能なんだ、と感心させられる。もちろん、この本だけですべてを理解するのは無理だと思うが、普通の入門書で挫折したワタシとしては、再チャレンジのきっかけになりそうなのである。

まだ途中までしか読んでいないが、この本で概要を知ってから以前挫折した本を読むと、あら不思議、なるほどなるほど、と読めるのだ(笑)。黒体の輻射の問題は古典力学では説明できない典型的な例であり、実はほとんどの教科書に書いてあるのだった。そうか、そうだったのね。でも、岩波物理学講座の「量子力学 I」を最初に開いたときは、なるほど~とか思わず、なんでこんな話が書いてあるのかなあ~(苦笑)ってな感じだったのだ、ワタシは。同じ内容であっても、ちょっとした表現の違い、ちょっとした心遣い、ちょっとした親切、ちょっとした優しさ、ちょっとした動機付け、そういうことで、こんなにも受け取る側にとって違うのか、と驚く。

ということで、これからしばらく量子力学を勉強、否、楽しみたいと思うのでありました。いつまで続くかなあ~(笑)。

投稿者 sukarabe : 21:10 | この記事の固定URI | コメント (0) | トラックバック (0)