2次形式メモ(4)

Primes of the Form X2 + Ny2: Fermat, Class Field Theory, and Complex Multiplication (Pure and Applied Mathematics (Wiley))


David Coxの Primes of the form $x^2+Ny^2$ を、挫折したあたりから再び読んでみた。今度は理解できた気がする。以前躓いた理由は、ひとつには記述が抽象的で、それについて行けなかったこと。内容を理解してから読めば、抽象的な記述がかえって分かりやすいことに気付く。最初から抽象的な記述で理解するには、読む側にかなりの習熟度を要請するのだろうなあ。

Coxの本に執着している理由の一つは、「種」(Genus) の定義が気に入っていること。指標系ではなく、2次形式が modulo $p$ でとる値に従って「種」を定義しようというのは、この本の目的($x^2+Ny^2$でどのような素数が表されるのか?)からすると、適切なように思える。58ページに次のような記述がある。

We should mention that Gauss’ use of the word “character” is where the modern term “group character” comes from. Also, it is interesting to note that Gauss never mentions the connection between his characters and Lagrange’s implicit genus theory. While Gauss’ characters make it easy to decide when two forms belongs to the same genus, they are not very intuitive. Unfortunately, most of Gauss’ successors followed his presentation of genus theory, so that readers were presented with long lists of characters and no motivation whatsoever. The simple idea of grouping forms according to the congruence classes they represent was usually not mentioned. This happens in Dirichlet [28, pp. 313-316] and in Mathews [78, pp. 132-136], although Smith [95, pp. 202-207] does discuss congruence classes.

(適当訳。現今の「群指標」という用語は、ガウスが用いた「指標」という言葉に由来していることを指摘しておく必要があるだろう。興味深いことだが、ガウスは彼の指標系とラグランジュが暗黙裡に行った種の理論(ラグランジュは2次形式の値の合同類に着目したのだが、これが種の理論の発祥であるとCoxは言いたいのであろう)との関連性を一言も述べていない。ガウスの指標系によれば、二つの形式がいつ同じ種に属するかは容易に決定されるが、半面それはあまり直感的とは言えない。不幸にしてガウスの後継者たちの多くはガウス自身による「種の理論」の表現形式に従ったため、読者は目的意識もないままに、指標系の長いリストを見せられることになる。2次形式たちを、それらの値の合同類に従って分類するという単純な発想は通常触れられることがない。ディリクレの本、マシューズの本はそうである。しかしながら、スミスのレポートでは合同類に関する議論がある。

Coxの言わんとするところは共感できるが、先日のメモでも書いたように、実のところは少々異なっている。ガウス「整数論」には、合同類での分類という目的意識がちゃんと書いてあるのである。上澄みだけを抽出して教科書を書くと、そういう部分がそぎ落とされてしまうのであろう。Read the masters という標語 (Harold M. Edwards でしたっけ?) はやはり大事だなあと思うのである。

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