2次形式メモ(2)


ガウスの「種の理論」(Genus Theory) への動機付け。

判別式$D=b^2-4ac=-15$の2次形式
\[ (a,b,c)=ax^2+bxy+cy^2 \]
により素数$p$が表されるか否か、という問題を考える。

この場合、簡約形式 (reduced form) は
\[ (1,1,4)=x^2+xy+4y^2, \quad (2,1,2)=2x^2+xy+2y^2 \]
の2つ。判別式 $-15$ のどの形式もこの2つのいずれか一方と正式同値になる。
(つまり、$SL(2,\mathbb{Z})$ で互いに移り合う。)
この2つは同値じゃないので、狭義の「類数」(Class Number)は2となる。

2次形式の一般論および平方剰余の理論などから、次のことまでは分かる。すなわち、2, 3, 5以外の素数$p$がこの2つのいずれかで表されるための必要十分条件は、2次合同式
\[ x^2 \equiv -15 \quad ({\rm mod } 4p ) \]
が解をもつこと、つまり、
\[ p \equiv 1, 2, 4, 8 \quad ({\rm mod } 15 ) \]
である。
しかし、これでは、$(1,1,4)$と$(2,1,2)$のどちらで表されるのか、あるいは両方で表しうるのか、が分からない。その為には何らかの方法で、2つの形式を「分離」することが必要となる。

そこで、別の切り口から問題を考えてみる。2次形式が表す整数を、いろんな数を法(modulo)として考えるのである。具体的には判別式を割り切る素数を考える。(それ以外の奇素数をモジュロとしても、情報は得られないことが示される。Cahenの393ページあたり。)

modulo 3 で考えてみよう。3の倍数になるものは考えないことにして、これ以外が余り1、2のいずれになるのかを調べてみると、
\[ x^2+xy+4y^2 \equiv -2(x-y)^2 \equiv 1 \quad ({\rm mod } 3) \]
および
\[ 2x^2+xy+2y^2 \equiv 2(x+y)^2 \equiv 2 \quad ({\rm mod } 3) \]
となる。

modulo 5 でも同様の結果になる。5の倍数になるものを考えないことにすれば、
\[ x^2+xy+4y^2 \equiv -(2x-y)^2 \equiv 1, 4 \quad ({\rm mod } 5) \]
\[ 2x^2+xy+2y^2 \equiv 2(x-y)^2 \equiv 2, 3 \quad ({\rm mod } 5) \]
である。

この問題の場合は modulo 3, modulo 5 の片方だけからも分離することができて、
$p\neq 2, 3, 5$ なる素数$p$に対して、
\[ p=x^2+xy+4y^2 \quad \Longleftrightarrow\quad p \equiv 1, 4 \quad ({\rm mod } 15) \]
および、
\[ p=2x^2+xy+2y^2 \quad \Longleftrightarrow\quad p \equiv 2, 8 \quad ({\rm mod } 15) \]
という結論が得られる。

以上を一般化するには、平方剰余の指標(character)と関連づける。modulo 3 で特定の余りになることは、指標 $\left(\frac{n}{3}\right)$ (ルジャンドルの記号、ヤコビの記号) が一定の値になることに対応している。判別式を割り切る奇素数$p_i$に関する指標 $\left(\frac{n}{p_i}\right)$ の値を考え、これらがすべて一致する2次形式の類(class)をまとめて、種(genus)と名付けるのである。
(これ以外に2のベキ乗での分類、つまり、素数2に関する指標もあるが、また別の機会に。)

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