とある有名な不等式の証明

今朝,ふと思いついて計算してみたら,あまりにも簡単にできて,驚いた。

$n$を任意の正の整数とするとき,$x>0$において不等式
\[ e^x>1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots+\frac{x^n}{n!} \]
が成り立つことはよく知られている。$e^x$のテイラー展開から自然に導かれるのであるが,それを使わずに直接に証明しようとすると,微分を何回もすることになり(帰納法との併用),けっこう手間がかかるのである。

ところである。両辺の対数をとった不等式
\[ x>\log\biggl(1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots+\frac{x^n}{n!}\biggr) \]
を考えると,あら不思議。微分一回だけで簡単に証明できるのである。
\[ f_n(x)=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots+\frac{x^n}{n!} \]
とおけば,
\[ f_n'(x)=f_{n-1}(x), \qquad f_{n}(x)=f_{n-1}(x)+\frac{x^n}{n!} \]
が成り立つから,
\[ g(x)=x-\log f_n(x) \]
を微分すると,
\[ g'(x)=1-\frac{f_n'(x)}{f_n(x)}=1-\frac{f_{n-1}(x)}{f_n(x)}=\frac{x^n}{n!\,f_n(x)} \]
となる。これから$g(x)$は$x\geqq 0$において単調増加であることが分かるから,$x>0$において$g(x)>0$であることが言える。

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