代数的数論

何故か代数的数論を勉強したいという気になって,あれこれ資料を収集中。少し前に2次形式の数論(2次体ではなくて)にはまっていた時期があるのだが,その延長というのとはちょっと違う。きっかけが思い出せないのだが,やはり根底には,Coxの Primes of the form $x^2+ny^2$ をきちんと読みたいというのがあったと思う。

代数的数論の教科書というのは日本語でも幾つかあるのだが,基礎的部分はけっこう退屈で,それなりの動機がないと,読み通すのはけっこう苦痛だったりする。とりあえず,本棚にある高木貞治,藤崎源二郎,石田信,あたりを読もうとするのだが,それぞれに難しい。他にないかと,英語の本とかを探すのだが,こちらもいろいろとあって,というかありすぎて,悩ましいのである。Neukirch, Fröhlich-Taylor, Samuel, Ribenboim, あたりを行ったり来たりしている。

$x$が代数的整数であるとは,$x$がモニックで整数係数の代数方程式
\[ x^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+\dots+a_{1}x+a_{0}=0 \]
の根になること。
この定義だと,代数的整数の和が代数的整数になることすら自明ではないが,代数的整数になるための条件を「線型化」することができて,それを用いれば,簡単に証明される。ポイントとなるのは,次の命題。

$x$が代数的整数であることは,$xM\subset M$なる有限生成$\mathbb{Z}$-加群$M$が存在することと同値である。

一見すると意味がよく分からない命題であるのだが,これが非常に強力であることが,段々と分かってくる。命題の証明は次のようになる。$M$の生成元を$y_1$, $y_2$, $\ldots$, $y_n$とすれば,
\[ xy_{i} = \sum_{j=1}^{n} a_{ij} y_j \]
となるが,これは$x$が行列 $A=(a_{ij})$ の固有値であることを意味している。よって,固有方程式
\[ \det (xI-A)=0 \]
が成り立つが,これを展開すれば,モニックの$n$次方程式になる。

この命題を利用すると,代数的数の全体が環をなすことが簡単に証明される。一見すると大したことのないように見える命題なのだが,実のところ非常に強力なのである。単に代数的整数の定義の段階でも,加群という抽象代数の概念が大いに役立っているというのが,意外であった。

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