$\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$の整数として,何故 $a+b\sqrt{-3}$ ($a$, $b$は有理整数) の全体を取ると,あまり上手く行かないのか。例えば,素元分解の一意性が成り立たない。
正しくは,$a+b\omega$ ($a$, $b$は有理整数) の全体とする。同じ事だが,$a+b\frac{1+\sqrt{-3}}{2}$ ($a$, $b$は有理整数) の全体。
理由。整数の資格があると思われる範囲で,出来るだけ広くとっておかねば上手くいかない。例えば,有理整数の範囲でも,部分環(または部分加群)として偶数の全体だけを考えると,素元分解の一意性が成り立たない。
\[ 36=6\times 6 = 2\times 18 \]
は,偶数だけからなる部分環では,異なる分解になる。もちろん,これは分解が不完全なのだが,そのためには奇数も考える必要がある。同じ理由で $a+b\sqrt{-3}$ だけでは整数として少なすぎるのである。
$\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$の部分環 $A$ で,有理数体との共通部分が有理整数全体になるもの,つまり
\[ A \cap \mathbb{Q}=\mathbb{Z} \]
となるもので最大のものを考えると,それは $\mathbb{Z}[\omega]$ になる。こういう方向で考えると,代数的整数の定義(整数係数でモニックな多項式の零点になるもの)が自然なものとして受け入れられる。