誤訳ではないのか

ケルナーの「フーリエ解析大全」(Körner : Fourier Analysis) は楽しい本なのだが,翻訳がちょっとどうなのかなあ,と思う箇所が時折ある。先日,ケルヴィン卿 (William Thomson) の話を読んでいて,やはり違和感を感じた。次の写真は,下巻のp.272なのだが,Thomsonがストークスの定理の発見を見逃した,と書いてある。そんなバカな,である。

Körner Fourier Analysis ケルナー フーリエ解析大全 下巻 p.299

ストークスの定理については,最初に発見したのがトムソンであり,トムソンからストークスへの手紙に書かれていること,ストークスがケンブリッジだったか,大学の数学コンテストの問題として出題した結果,ストークスの定理として広まったこと,これらは良く知られている話であり,どうして「発見を見逃した」ことになっているのか,まったく不可解である。

ということで,原文に当たってみた。次がスキャンしたもののスクリーン・ショット。

Körner Fourier Analysis p.272

当該箇所を書き出してみる。

Other discoveries and inventions of Thomson are dealt with elsewhere in this book. We note in passing the discovery of what is now called Stokes’ theorem and the first mathematical discription of the oscillation of an electric circuit.

うーむ。これがどうして上のように訳されるのか,全く不可解だ。in passing を辞書で調べると,「事のついでに」とか「ちなみに」という意味らしい。してみると,次のような内容なのだろう。適当訳だが。

これ以外のトムソンの発見・発明についてはこの本の別の場所で扱うことになるが,ここでは,今日ストークスの定理と呼ばれている定理の発見と,電気回路の振動を初めて数学的に記述したことを注意しておこう。

“誤訳ではないのか” への4件の返信

  1. 続きはCMの後で、って言った後で、ちょろっとだけ予告編してるんだけど、
    その予告編が間違ってるっていう、かなりお粗末な作りですね。
    なんかこう、マニアックな本だからこそ、事実関係に詳しい人に校正させないと、ですよね。
    これではCMの時にチャンネルを変えられて視聴者は戻ってこないでしょう、ぷぷぷ

  2. kebaさん,こんにちは。

    ってことは,やはりこれは翻訳おかしいということで良いんですよね?
    内容を考えると変だとわかるのですが,そうじゃないところだと,見逃してしまいそうで,ちょっと困ります。どうもセミナーの学生が分担で翻訳したのを先生がまとめたものらしいのですが,そのあたりがどうだったんでしょうか。

  3. そうで~す、誤訳の類いでありましょう。
    さらっと読んで、あそっか、色々あるけど
    この人の偉業はその2つが燦然と輝く類いのものなんだな、という印象です。
    先生、しっかりしてくれ~、ですね(笑)

  4. kebaさん,度々すみません。
    英語自信ないので,おかしいなと思ってもなかなか確信もてないので,助かります。

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