以前探したときにはなかったと思うが、今日、久しぶりに The Internet Archive で検索したら、Paul Bachmann の数論教科書 Grundlehren der Neurener Zahlentheorie が見つかった。
Internet Archive: Details: Grundlehren der Neurener Zahlentheorie
Bachmannは沢山の教科書を書いていて、初等数論、2次形式・2次体の数論に限っても、何冊かある。内容的に重なる部分もあるが、執筆時期やターゲットに応じて微妙にニュアンスが違っていたりする。この Grundlehren は1907年の出版だが、以前の同種の著作に比べてモダンなスタイルで、現今の教科書に近い。後半ではデデキント(Dedekind)のイデアル論が展開されているが、それに対応して前半の記述が以前のものと変わっている。
まず、$ax+by+cz+\cdots$ の形で表される整数全体の集合を導入している。古典的な1次の不定方程式の理論をイデアルないしモジュールの言葉で翻訳しているに過ぎないが、数体のイデアル論をあとで説明するには、こういう言い換えがあるとスムースに繋がる。次に、2次形式だが、イデアル論との対応が容易なように、$ax^2+bxy+cy^2$ と中央の係数が偶数とは限らない形で扱っている。以前の教科書ではガウス以来の伝統に従って $ax^2+2bxy+cy^2$ の形だった。これだと2次体の主整環だけでは対応できず、その上のモジュール、デデキントの用語でオルドヌング(Ordnung)というものを考える必要があったと思う。
現今の教科書に近いと上で書いたが、逆に考えれば、今の教科書はBachmannを引き継いでいるとも言える。むしろ、最近の本よりも詳しく、ゆったりと理論が展開されている。読者層は今ほど多くないと思うが、これだけのページ数の書籍が出版できたというのは、ある意味豊かな時代だったのだろうか。