牛首を懸けて

最近のトイレの友が、この本。漢文名作選(第2集) 第6巻の「故事と語録」。故事成語の類の出典みたいなものが載っていて楽しい。文章も短くて嬉しい。もはや一語一句をきちんと「読む」ことは諦めているので、もっぱら「眺める」のみなのだが。

漢文名作選(第2集) 第6巻 故事と語録

今日眺めたのは「牛首を懸けて馬肉を売る」というもので、晏子春秋から。斉(せい)の霊公(在位BC581年-BC554年)は、自分は女性に男装させるのが好みなのに、一般の女性が真似て男装することは禁じた。ところが、いくら罰則を重くしても効き目がない。晏子に相談すると、宮中では男装させ、宮中の外ではこれを禁じるというのでは、あたかも牛首を店先に掲げておき店内では馬肉を売るようなものです、と諌めた。そこで、宮中でも男装を禁じたという話。

牛首を懸けて馬肉を売る

まあ、晏子が如何に優れた宰相かという話なので仕方ないが、霊公はいかにも愚かな王様に描かれていて、いささか気の毒。

「猶」というのが、いわゆる再読文字というやつで、「猶・・・のごとし」とか「猶・・・がごとし」と読む。この場合は、「猶(な)ほ牛首(ぎゅうしゅ)を門に懸けて、馬肉を内に売るがごとし」となる。

三国演義

ちょっと前からテレビ東京で日曜朝に「三国演義」のアニメをやっている。最初はアニメかあ,と思っていたが,観ているとなかなか面白い。原作の三国演義にけっこう忠実なので,ちくま文庫の「三国志演義」を読む際にも助けになるというか,イメージが掴めて楽しい。やはり画像・映像の威力は偉大だ。

アニメの利点の一つは,登場人物を年齢通りに変化させることが容易であることだ。ドラマだと,メイクである程度はやるのだが,さすがに無理がある。南蛮侵攻の回では,趙雲がちゃんと年寄りになってて,なるほど〜,そりゃそうだと思った。ドラマのイメージだと,趙雲っていつまでも青年みたいだからなあ。

しかし,段々と佳境というか,せつない話になってしまう。先々週で孟獲制圧の話は終わって,先週から北伐に入った。ということは,そろそろ街亭で馬謖が諸葛亮の命に反して司馬懿にやられてしまうのだ。つらいなあ。

朝三暮四

首相が朝令暮改と勘違いしていたとかで話題(?)になっている四字熟語 :mrgreen: 。実は、国会中継をテレビで観ていたのであった。あれまあ、とも思ったが、実はワタシも数年前までは良くは分かっていなかった。言葉自体は聞いたことあったし、朝令暮改とは別であることも分かっていたが、その程度。意味まではきちんと知らなかった。漢文の本を買うようになって、改めて勉強したような次第であったのだ。そういうわけなので、別に知らなくたって良いじゃないかと、擁護したい気分なのである。

むしろ、質問している議員の話しぶりの方が嫌いだった。すっごく嫌味な、あてこするようなしゃべり方。

それはともかく、朝三暮四。列子にある話。まず、原文。

宋有狙公者。愛狙養之成群。能解狙之意、狙亦得公之心。損其家口、充狙之欲。俄而匱焉。將限其食。恐眾狙之不馴于己也。先誑之曰『與若芧、朝三而暮四、足乎』、眾狙皆起而怒。俄而曰『與若芧、朝四而暮三、足乎』眾狙皆伏而喜。

次に、書き下し文。

宋に狙公(そこう)なる者有り。狙(そ)を愛し、之を養って羣(むれ)を成す。
能く狙の意を解し、狙も亦(また)公の心を得たり。
其の家口(かこう)を損(へら)して、狙の欲を充せり。
俄(にわか)にして匱(とぼ)し。
将(まさ)に其の食を限らんとす。
衆狙(しゅうそ)の己に馴れざるを恐るるや、
先ず之を誑(たぶら)かして曰はく、
「若(なんじ)に茅(しょ)を与えんに、朝に三にして暮に四にせん。足らんか」と。
衆狙皆起って怒る。俄にして曰はく、
「若に茅を与えんに、朝に四にして暮に三にせん。足らんか」と。
衆狙皆伏して喜ぶ。

大意は次の通りで良いのだろう。「ある人が猿を群れで飼っていたのだが、急に貧しくなってしまった。そこで、餌を減らそうと思い、まず、トチの実を朝に3個、夕方に4個でどうだと猿に持ちかける。猿は皆で大いに怒った。そこで、じゃあ、朝4個、夕方3個にしようと提案する。すると、猿は皆で喜んだ。」

実のところ、猿を笑えないのであった。自分の行動、仕事の仕方、つらつら考えるに、おお、我のことであったか!と嘆息するのである(苦笑)。

漢文こばなし集

ちょっと気の利いた 漢文こばなし集

2ヶ月ほど前だったか、ジュンク堂で見かけた。気軽に読める本。あまりに気軽に読めそうなので、買うのをよそうかと思ったくらい(笑)。出版社が大修館で漢文の組版がとてもきれいだったこともあり、迷った末に購入した。

このところ鞄に常時入っていて、電車などで読んでいるのだが、そういう用途には最適。さすがに朝の通勤時に岩波全書の「漢文入門」を読むのはいささかつらいものがある。

全部で23話の、それこそ「ちょっと気の利いた」小話ばかり。話題や出典も多岐に渡っていて、どれも面白い。実は最初、著者のコメントというかエッセー風の解説が、少々うとましく感じたのだ。多分、こちら側が「漢文学習モード」になっていて、いいよ、そんなこと、なんて思っていたに違いない。不思議なもので、訓読の仕方とか、そういうことをあまり気にせず、それこそ、漢文であるかどうかなんてどっちでもいい、という感じで読んでいると、著者ののんびりとした語り口がすんなりと受け入れられるのであった。

三國演義オープニング

YouTubeに中国中央電視台制作「三国演義」のオープニング映像があったのでメモ。

YouTube – 三国演义 片头全歌 Three Kingdoms Full Opening Movie

関羽(雲長)、張飛(翼徳)は言うに及ばず、後期の南方征伐で出てくる孟獲、諸葛亮の最後のライバル 司馬 懿(しば い)に至るまで、主だった出演者がほぼ登場している楽しいオープニング。

三国志@東京MXテレビ

三国志は文庫本と平行して、東京MXテレビの方も観ているのだが、そちらはそろそろ終盤。諸葛亮が亡くなるのは見たくないなあ。先々週あたりが、例の「泣いて馬謖を斬る」の回。馬謖(ばしょく)が諸葛亮の言いつけを守らず丘の上に駐屯したため、魏軍に敗れ、街亭(がいてい)を失うことになった。先週は諸葛亮と司馬懿(しばい)との直接対決。今週は休みだったから、次週あたりそろそろか。いやあ、観ていてつらいのである。

それに、魏の司令官、司馬懿がねえ・・・小癪というか、なかなか賢いのであった。結末を知っているだけに、これからの回はつらいなあ。

三国志演義

三国志演義4(井波律子訳) ちくま文庫

原稿の方も目処が立ってきたので(と言いつつ、まだ九十里だが、笑)ちょっと息抜き。先日買った三国志演義をパラパラと読んでいる。翻訳もいくつかあるようだが、ちくま文庫の井波律子さん訳を選んだ。連続時代劇風に、毎回毎回お題があって読みやすい。一回分の分量もほぼ一定しており、最後に期待を持たせつつ次回に続くという形式が、なかなか楽しい :mrgreen: 。例えば、第52回は「諸葛亮(しょかつりょう)、智もて魯粛(ろしゅく)を辞(こば)み、趙子龍(ちょうしりゅう)、計もて桂陽(けいよう)を取る」というタイトル。最後は「はてさて諸葛亮はどんなことを言い出すのでしょうか。まずは次回の分解(ときあかし)をご覧ください。」で次回へと繋ぐ。

おまけに中国中央電視台版のテレビ番組を観ているものだから、頭の中で映像がかぶるというか、文庫版の台詞までがテレビの俳優さん(と吹き替えの声優さんの声)で聞こえる始末(笑)。これはこれで楽しいのだが、病膏肓の様相かも 😉 。

それにしても、この歳で三国志にはまるとは思わなんだ。人に話すと「レッドクリフですか?」と言われるのが少々いまいましいかも 😉 。否否なのである。そっちじゃないんだけどなあ。

百里を行く者は・・・

先週から、原稿を抱えてのつらい毎日。他人の原稿に手を入れ、自分でも書き足し、なんだかんだで時間が掛かる。全部で九つのパートに分かれているのだが、どのパートも大体出来あがったなあと思ったところからが時間が掛かる。いや、昨年もそうだった。もう大丈夫だと思ったところからが長いのである。

ということで、戦国策なのであった。曰く「百里を行く者は、九十を半ばとす(行百里者半於九十)」。いや、ごもっともです。何度も経験して分かっているつもりなのに、つい油断しちゃうんだなあ。

ともあれ、やっと最後のパートに辿り着いた。あと2つのセクションを残すのみ。油断は出来ないが、明日には何とか終わるだろう。

今日はかみさんも勉強が忙しいみたいで、いっぱいいっぱいの様子。ワタシも原稿書きでへろへろなのだが、都寿司まで出撃。出前を自前で取りにいく。持ってきてもらえば簡単なのだが、何故か取りに行くんだよねえ。腹具合を考えて、いつもより少なめに注文したが、もうちょっとあっても良かったかな?

下板橋・都寿司(出前)

今日のマグロは大間のメジだそうな。メジマグロはホンマグロの子供らしい。ふーむ。しっとりとして美味しいマグロ。脂がきつくなく、かみさん好みだな。

出前の良いところは、自宅で好きな酒と一緒に食べられること。もう今日は仕事しないので、蓬莱泉の「和」を飲む。ああ、これで「和」も終わりだ。明日、新井屋さんに行かないと。

レッドクリフ

テレビでやっていたので観てみた。レッドクリフって何だろうと思ったら、赤壁(せきへき)を英語にしただけなんですね。なんだ。赤壁の戦いと言えば、三国志で一番の名場面なのかな。テレビは結局パート1だったので、公開中のパート2を観ろという宣伝みたいな感じ。

時間の制約で仕方ないと思うが、かなり圧縮されていて、これって話を知らない人でも楽しめるのかなあという疑問。あと、個人的には諸葛亮の俳優さんがちょっと・・・。中国電視台のテレビ版の俳優さんの方が好きだな。まあ、あちらはリアルさはなくて、完全に三国演義の世界というか、諸葛亮を仙人みたいに描いているが。でも、リアルさはなくても、あの悠々たる雰囲気の諸葛亮は好きなのだ。

徳間文庫版「史記」

史記〈4〉逆転の力学 (徳間文庫)

司馬遷の史記はいろんなバージョンが出版されているが、徳間書店のものは、読みやすく再構成された特色のあるもの。いま読んでいるのは、項羽と劉邦の覇権争いの部分、文庫版の第4巻なのだが、項羽本紀、高祖本紀の他、淮陰候列伝(韓信の伝記)などを織り交ぜて、前後の関係が分かりやすくなっている。もっとも、項羽本紀を通しで読みたいという時など、ちょっと不便なこともあるのだが。

本文は、必要に応じて歴史的な説明などがあり、まずは現代語訳、続いて、原文(白文)と書き下し文(訓読)が上下2段で併記されている。白文と訓読を比べながら読めば漢文を読んでいるという満足感(?)も得られるのだが、個人的には白文ではなくて、返り点(レ点、一二点など)が付いているともっと良かったのになあと思う。活字を組むのは大変だと思うが。