数学

NHKハイビジョン特集「リーマン予想」

録画しておいたNHKハイビジョン特集「リーマン予想」を観た。ううむ。微妙・・・。

「素数の魔力に囚(とら)われた人々 ~リーマン予想・天才たちの150年の闘い~」というタイトルからしてNHKらしいというかテレビらしい無理やり盛り上げようという感じが垣間見えて少々うんざり。内容は・・・一般向けにはこういう説明になってしまうのかなあとも思うが,複素数の話とかいっさい抜きで,いきなりゼータ関数の零点を曲面の高さ零の位置だというのは・・・まあ,仕方ないですか。

素数階段とガウスの素数定理の部分は良かった。素数階段という表現方法は初めて知ったが,なるほどね。これは上手いと思う。オイラーがこれを考えていたというのは,本当なのか?という疑問はあるが。

許しがたいのは,ハーディの描写。これでは,陽気で自信家で能天気な変人ではないか。おまけに,リアルパート 1/2 のライン上に無限個の零点があることを示した論文について,これではリーマン予想の証明になっていないという件に至っては噴飯もの。そんなこと(リーマン予想の証明になっていないこと)は当たり前ではないか。まるでハーディが大失敗したような描写には我慢ならない。NHKに抗議の手紙を書いてやろうかとすら思うほどである。繰り返しになるが,ハーディの結果は,当時としては最高峰であったのだ。プンプン。

NHKの「リーマン予想」見逃してしまった〜

NHKスペシャルで「リーマン予想」やっていたのに、知らずにいた。あーあ。

NHKスペシャル|魔性の難問 〜リーマン予想・天才たちの闘い〜

再放送ないかなあと調べていたら、11月27日(金曜日)の午後10:30からBS-hiでやるらしい。しかも、こっちの方が90分と時間が長い。ハーディ出てくるかなあ、出てくるよねえ。楽しみと幾ばくかの不安(笑)。

四色問題

ロビン・ウィルソン「四色問題」新潮社 (Robin Wilson, Four Colours Suffice, How the Map Problem Was Solved)

先週、つい魔が差して(笑)購入してしまったのが、Robin Wilsonという人の「四色問題」(原題は、Four Colours Suffice)。平面上の地図は必ず4色で塗り分けられるという定理(4色定理)が証明されるまでの、興奮と落胆(笑)のストーリー。主だった登場人物は次の通り。

フランシス・ガスリー (Francis Guthrie) 4色問題の発案者。イングランドの地図を塗り分けている時に、4色あればどんな地図も塗り分けられることに気付く。

ド・モルガン (De Morgan) フランシス・ガスリーの弟から4色問題を聞き、興味を持つ。多くの数学者にこれを知らせ、4色問題が世に知られるきっかけを作る。

ケイリー (Arthur Cayley) 忘れられていた4色問題を復活させ、これに関する論文を初めて書く。各頂点から出る辺が3本の場合(3枝地図)に限っても一般性を失わないことを注意した。

ケンプ (Alfred Kempe) 4色定理の証明を発表する。実は間違っていたが、11年間も気付かれずにいた。証明には失敗したものの、後の発展のきっかけとなる重要な手法(Kempe chains など)を開発した。

ヒーウッド (ヘイウッド ?) (Percy John Heawood) ケンプの証明に欠陥があることを発見する。ケンプの証明を修正して、5色あれば十分であること(5色定理)を証明する。また、平面・球面以外での地図についても考察し、示性数(Genus、穴の数、例えばドーナツ面のときは1)がpの閉局面上の地図を塗り分けられる色の個数についての公式を発見した。

ヴェルニッケ 不可避集合(どんな3枝地図も必ず含まないといけない配置の集まり)の概念を導入し、幾つかの不可避集合を発見する。

ハインリッヒ・ヘーシュ (Heinrich Heesch) 不可避集合を求めるために、放電法(discharging)を考案する。これがその後の発展の基本的道具となる。

ウルフガング・ハーケン (Wolfgang Haken) ケネス・アッペル (Kenneth Appel) と共同で、4色定理を証明する。放電法を改良することにより、およそ2000個の可約配置からなる不可避集合の存在を示した。検証にはコンピューターが使われた。この結果として4色定理が成り立つことが言える。

最終的にはHakenとAppelによって証明されたのだが、コンピューターを何千時間(?)も使って検証したというその証明には、多くの人が落胆したのだった。

この本は、4色問題についてまったく知らない人でも楽しく読める素晴らしい本。数学の知識もほとんど不要。定理らしき定理は、オイラーの多面体定理(V-E+F=2) ぐらいしかないし、これもちゃんと説明されている。中学生でも読めちゃいますね、これは。

4色定理の証明はとっても難しいが、5色定理ならそれほど難しくなく、きちんと説明されていて嬉しい。大分前にクーラント、ロビンズの「数学とは何か」で5色定理の証明は読んだはずだが、まったく覚えておらず(笑)、今回初めて理解した気分。6色定理になると、さらに易しい。6色定理は「隣国は5つだけ」レンマから直ちに出るが、このレンマ(補助定理)も、オイラーの多面体定理 V-E+F=2 から簡単に示される。

こんな感じで、いきさつやお話だけでなく、具体的に数学の内容もやさしく、かつ、きちんと説明されている。特に、可約配置、不可避集合、放電法、といった基本的概念が分かりやすく説明されていて、HakenとAppelの証明法の基本方針が理解できたのは良かった。いや、素晴らしい本ですよ。

数えてみよう

タイトルに困ったが、まあ、適当で良いか。こんな簡単なことでも、一応は数学のカテゴリーに入れてOK?

ということで、本題。至極簡単な話。N以上M以下の整数の個数は何個でしょうか。あ、もちろんM≧Nです。例えば、20、21、22、・・・100まで、何個あるか。答えは 100-20+1=81個ですね。

一般の場合は、M-N+1 個となる。証明も難しくないが、分かりやすいのが欲しいところ。ずっと以前、多分中学生か高校生の頃に証明を考えた記憶がある。数直線上で、N, N+1, ・・・, M-1, M のところに木を植える。NからMまでの距離は M-N だから、区間の個数は M-N 個。よって、所謂「植木算」によって、木の本数は1本多くなり、M-N+1 個である。

簡単で悪くないと思っているのだが、個数の問題なのに、距離を持ち出している点が気になっていた。つまり、理論の純粋性(?)が損なわれている気がするのだ(笑)。

朝、シャワーを浴びながらぼんやり考えていて、ふと思いついた。N から M までの整数の個数と、N-x から M-x までの整数の個数は どんな整数 x に対しても同じだ。これは当たり前。そこで、x=N-1 とおく。すると、1 から M-(N-1) までとなる。この個数は当然、M-(N-1)=M-N+1 になる。

うーん、今こうして再現してみると、思ったほどシンプルじゃないかなあ。

二項係数\binom{p}{r}が素数pで割り切れることの証明


$p$が素数で$1\leq r \leq p-1$のとき,二項係数${}_p{\rm C}_r$は$p$で割り切れる。
これは有名な事実で,証明も難しくない。そうではあるが,二項定理を利用するステキな証明を教わったので,メモ。

二項定理から
\[ (1+x)^p = 1+\sum_{r=1}^{p-1}{}_{p}{\rm C}_{r}x^r+x^p \]
微分すると
\[ p(1+x)^{p-1} = \sum_{r=1}^{p-1} r{}_{p}{\rm C}_{r}x^{r-1}+px^{p-1} \]
左辺の係数はすべて$p$の倍数なので,右辺もそう。つまり,$r{}_{p}{\rm C}_{r}$ は$p$の倍数。$r$は$p$と互いに素なので ${}_{p}{\rm C}_{r}$ は$p$の倍数である。

結局のところ,$r{}_{p}{\rm C}_{r}=p{}_{p-1}{\rm C}_{r-1}$ の別証明になっている。

David Cox のガロア理論の本

またぞろガロア理論の入門書かあ、と思いつつも、著者が David Cox ということもあり、念のため調査。紀伊國屋書店の紹介ページでは Google プレビュー という機能があって、中身をかなり立ち読みできる。目次を眺めていると、おお〜、レムニスケートの等分に関するアーベルの定理が紹介されている。さすが Cox である。期待を裏切らないねえ〜。

一番最後の第15章はタイトルがずばり「レムニスケート」である。レムニスケートの定義から始めて、ガウスが円周等分したのと全くパラレルにレムニスケートの等分が考えられること、それに関するアーベルの先駆的仕事を紹介している。一般の楕円関数ではなく、レムニスケート関数に限定し、加法定理、倍角公式など。倍角の公式は整数倍だけでなく、「ガウスの複素整数」倍に対しても作ることが出来る。これが所謂虚数乗法。これを利用して、レムニスケートの等分点を添加した体のガロア群がアーベル群であることが示される。途中で、ガウス整数を係数とする多項式についての、アイゼンシュタインの既約性定理なども原典を引きながら紹介される。もちろん表現方法は現代的なのだが、内容においてガウス、アーベル、アイゼンシュタインが何をどのように導いてきたのかが良く分かるような説明になっているようだ。まあ、内容を大体知っているから、立ち読みで分かったようなことを書いている(汗)わけであるが。

それにしても、相変わらず、証明の細部を章末の練習問題に委ねるという手法が取られていて、ちょっと複雑な気持ち。自力で解ける分には問題ないのだが、時としてそうでないこともあるしなあ。

培風館・新数学シリーズの組版

どこで聞いたのか、あるいは読んだのか、すっかり忘れたのだが、培風館の新数学シリーズの話。曰く、あのサイズであれだけの内容が可能な秘密は組版にある、と。漢字に比べて仮名が小さく組まれているのだと言う。

そんなことがあるかいな、と思いつつ、本棚から幾つか取り出してみた。ホントだ〜 😯 😯 😯  確かに仮名の活字は漢字に比べて小さい。

山内恭彦、杉浦光夫「連続群論入門」培風館・新数学シリーズ18
山内、杉浦「連続群論入門」p.62

どれでも同じなのだが、写真は杉浦先生の「連続群論入門」。あ、山内・杉浦共著でしたっけね、一応は :mrgreen: 。仮名は小さいというか、幅が狭いという感じ。なるほど。それで狭い版面に多くの情報を詰め込めるのか・・・。うーむ、恐るべし培風館。

他の出版社でこんな工夫しているところってあるんでしょうか。培風館も他のシリーズではやっていないみたいだし。それとは別に、「連続群論入門」って今は絶版なんですね。アマゾンで調べたら、中古で15000円だったので、のけぞりましたよ(笑)。

LagrangeのRecherches d’arithmétique

Gaussの2次形式の合成を特別な場合にLagrangeが既にやっているらしいのであるが、それの確認とLagrangeがそれをどうやって導いているのかを知りたくて、Lagrange全集を探索中。さしあたっては、論文 Recherches d’arithmétique (数論研究) をざっとでも見ておくかな。

ということで、Internet Archive で検索。第3巻の終わりの方に、数論研究はあった。

まだダウンロードしてなくて、ネット上で少し読んだだけだが、簡約形式の計算がかなり詳しくされていて、表の形でまとめられている。合成の計算は見当たらないような・・・。また時間を見つけてゆっくりと読んでみよう。

とあるレンマ


[ 備忘録 ] (Coxの本の証明が気に入らなかった(?)ので、自前の証明。もっとも、自分で考えたあとでもう一度読んでみたら、実は同じだった(爆)。いや、よく見れば内容的には同じなのだが、提示の仕方がねえ・・・。
ということで、自分の為に記録。)

初等的議論で次の Lemma (補助定理) を示すことができる。

2個の平方数の和として表される自然数$N=x^2+y^2$と、その素因数$p$を考える。
もし、$p$も$p=a^2+b^2$と2個の平方数の和になるならば、
$\frac{N}{p}$も2個の平方数の和として表される。

例えば、$N=65$とその素因数$p=5$は
\[ N=65=16+49=4^2+7^2, \qquad p=5=1+4=1^2+2^2 \]
と2個の平方数の和として表される。よって、$\frac{N}{p}=13$もそうなのである。実際、
\[ \frac{N}{p}=13=4+9=2^2+3^2 \]
となる。これがいつも成り立つことをレンマは主張するものである。

2個の平方数の和の全体が「積に関して閉じている」ことは、ブラハマグプタの恒等式
\[ (a^2+b^2)(z^2+w^2)=(az+bw)^2+(aw-bz)^2 \]
から直ちに分かるが、商に関しても同様の事が成り立つことは自明ではない。
とはいえ、証明のアイディアはやはりこの恒等式にある。

「続きを読む」

2次形式メモ(4)

Primes of the Form X2 + Ny2: Fermat, Class Field Theory, and Complex Multiplication (Pure and Applied Mathematics (Wiley))


David Coxの Primes of the form $x^2+Ny^2$ を、挫折したあたりから再び読んでみた。今度は理解できた気がする。以前躓いた理由は、ひとつには記述が抽象的で、それについて行けなかったこと。内容を理解してから読めば、抽象的な記述がかえって分かりやすいことに気付く。最初から抽象的な記述で理解するには、読む側にかなりの習熟度を要請するのだろうなあ。

Coxの本に執着している理由の一つは、「種」(Genus) の定義が気に入っていること。指標系ではなく、2次形式が modulo $p$ でとる値に従って「種」を定義しようというのは、この本の目的($x^2+Ny^2$でどのような素数が表されるのか?)からすると、適切なように思える。58ページに次のような記述がある。

We should mention that Gauss’ use of the word “character” is where the modern term “group character” comes from. Also, it is interesting to note that Gauss never mentions the connection between his characters and Lagrange’s implicit genus theory. While Gauss’ characters make it easy to decide when two forms belongs to the same genus, they are not very intuitive. Unfortunately, most of Gauss’ successors followed his presentation of genus theory, so that readers were presented with long lists of characters and no motivation whatsoever. The simple idea of grouping forms according to the congruence classes they represent was usually not mentioned. This happens in Dirichlet [28, pp. 313-316] and in Mathews [78, pp. 132-136], although Smith [95, pp. 202-207] does discuss congruence classes.

(適当訳。現今の「群指標」という用語は、ガウスが用いた「指標」という言葉に由来していることを指摘しておく必要があるだろう。興味深いことだが、ガウスは彼の指標系とラグランジュが暗黙裡に行った種の理論(ラグランジュは2次形式の値の合同類に着目したのだが、これが種の理論の発祥であるとCoxは言いたいのであろう)との関連性を一言も述べていない。ガウスの指標系によれば、二つの形式がいつ同じ種に属するかは容易に決定されるが、半面それはあまり直感的とは言えない。不幸にしてガウスの後継者たちの多くはガウス自身による「種の理論」の表現形式に従ったため、読者は目的意識もないままに、指標系の長いリストを見せられることになる。2次形式たちを、それらの値の合同類に従って分類するという単純な発想は通常触れられることがない。ディリクレの本、マシューズの本はそうである。しかしながら、スミスのレポートでは合同類に関する議論がある。

Coxの言わんとするところは共感できるが、先日のメモでも書いたように、実のところは少々異なっている。ガウス「整数論」には、合同類での分類という目的意識がちゃんと書いてあるのである。上澄みだけを抽出して教科書を書くと、そういう部分がそぎ落とされてしまうのであろう。Read the masters という標語 (Harold M. Edwards でしたっけ?) はやはり大事だなあと思うのである。