ジーゲルの超越数の本

2週間ほど前に注文していた本が届いた。ジーゲル (Carl Ludwig Siegel) の「超越数」(Transcendental Numbers) である。残念ながら古本なのだが,大好きな本なので,原書が本棚に並ぶのはとっても嬉しいのだ。

Carl Ludwig Siegel の Transcendental Numbers

ジーゲルは日本語(というかジーゲル自身が理解できない言語)への翻訳を許可しなかったらしく,ジーゲルの本で日本語訳が出版されているものはない。そうなのだが,自家版の訳というのがあって,それを貰って読んでいたから,今日まで原書を見ることがなかった。いや,大学の図書館で一度手に取ったことがあるにはあるのだが,訳本持ってるからということで,ざっと眺めるだけで終わっていた。

ふと,一度原書で読んでみたいと思った。原文ではどう書いてあるのかなと思う箇所も幾つかあったりしたので。

プリンストン大学の例の赤本のシリーズなのだが,本文ぴったり100ページの小冊子であることに驚く。これで$e$が無理数であることからゆったりと始めて,最後はGelfond-Schneiderの定理にまで到達するのだからすごい。印刷はタイプライターの印字なので,数式などちょっと読みにくいところもあるのだが,急がずのんびりと原文で読み直してみようと思う。

ディユドネ:現代解析の基礎

まだまだ本棚&部屋の整理は出来ていないのだが、それでも少しずつは本が減っているはずなので、自炊というか業者さんに頼んでPDFにしたものから、いくつかをメモ。

ディユドネ 現代解析の基礎1

Jean Dieudonne (ディユドネ) の Foundation of Modern Analysis (現代解析の基礎) である。中身はPDFにして、本体は廃棄処分にしちゃった。もう、この本を改めて読むこともないだろうし。

いまにして思えば、こういう本が流行った(?)のは、そういう時代だったのだと思う。多変数関数の微分が、線形写像近似、つまり「微分係数=行列」というのを、ある種感動して学んだのも、若かったからだ。フレシェ微分というのも、もともとは関数解析で発展した話ということだろう。それを有限次元ユークリッド空間での微積分に適用すると、このようになるということだろう。

ということで、今から見ると感動のない本なのであるが、まあ、思い出ということで。同じ頃の微積の本としては、杉浦先生が言及されていたグラウエルト(Grauert)のシュプリンガーの本の方が、微積って感じがして、いまでも良さげな感じがするね。

Cyclotomic Numbers

以下,全くの個人的メモ。

Gaussの円周等分論にあるのだが,一見すると関係なさそうな不思議なものが,Cyclotomic numbers (円分数とでも訳すのか?)なるもの。初等的議論で,Cyclotomic numbers についての性質が示せることが分かったので,メモ。簡単のため,$p=4l+3$の場合についてのみ。

$p$を素数として,modulo $p$での平方剰余を$R$で表し,平方非剰余を$N$で表す。$1\leqq a \leqq p-2$なる$a$に対して,$a\in R$, $a+1\in R$なる$a$の個数を$(RR)$と書く。同様に,$a\in N$, $a+1\in R$なる$a$の個数を$(NR)$と書く。$(RN)$, $(NN)$も同様に定義する。これらの数を求めるのが目標。

$p=4l+3$のときには,$(RR)=(NN)=(NR)$が成り立つ。これが鍵となる。まず,$a\in R$, $a+1\in R$とする。$p=4l+3$のときは,$-1$が非剰余だから,$-a\in N$, $-a-1\in R$となる。対応$a \longleftrightarrow -a-1$によって,$(RR)=(NN)$となる。

$(NR)=(NN)$の証明には,$a$のmodulo $p$での逆元$b$,つまり,$ab\equiv 1 \pmod{p}$なる$b$を用いる。$a\in N$, $a+1\in R$とする。このとき,$b\in N$であり,また,
\[ 1+b=ab+b=(a+1)b \in N \]
であるから,$b\in N$, $b+1\in N$となる。故に,対応 $a\longleftrightarrow b$によって,$(NR)=(NN)$が成り立つ。

あとは簡単。$a\in R$のとき,$a+1$は$R$, $N$のいずれかだから,
\[ (RR)+(RN)=\frac{p-1}{2} \]
が成り立つし,定義から,
\[ (RR)+(RN)+(NR)+(NN)=p-2 \]
は明らか。以上から,
\[ (RR)=(NN)=(NR)=\frac{p-3}{4}, \quad (RN)=\frac{p+1}{4} \]
が得られる。

MathJaxを試してみる

MathJaxが良くなっているらしいということで、ちょっこし試してみた。mimetexと同じく、LaTeXで表記すればよい。
\$\sqrt{2}\$ と書けば、$\sqrt{2}$となるし、
\$p=x^2+y^2 \Longleftrightarrow p\equiv 1 \pmod{4}\$ と書けば、
$p=x^2+y^2 \Longleftrightarrow p\equiv 1 \pmod{4}$

ディスプレイ数式も、この通り。
\[ \Gamma(s)=\int_{0}^{\infty} e^{-x}x^{s-1}\,dx \]

数式の画像をリアルタイムで作っているようなので、表示されるまで、ややもたつきが見られるが、mimetexと比べても、格段に美しい!LaTeXRenderに匹敵すると思う。これを javascript で実現しているとは驚きであるなあ。

ということで、これからはMathJaxで数式を書こうと思う。以下、簡単に導入メモ。

MathJaxのサイトから一式をDLして解凍したのち、自分のサイトにアップ。ファイルの個数が多いのでUploadには時間が掛かる。サーバー上で解凍できるならその方がベターかなあ。次に、MathJaxをWordPressで使う為のプラグイン、MathJax-LaTeXをダウンロードする。これをWordPressのpluginフォルダーにアップしてプラグインを有効化する。

プラグインの設定では、MathJaxをアップしたディレクトリーを指定する。あとはそのままでも良いのだが、ワタシの場合、\$…\$ でインライン数式を書きたいので、少し変更。default.js というファイルを開き、tex2jax の部分で、コメントアウトされているところを外す。何故か、[‘\$’,’\$’] がコメントアウトされているので、そのままではダラーで囲んだところが組版されないのだ。個人的な不満はここだけだった。ここを修正して default.js を選べば、設定は完了。

Polya-Szegoの問題集(2)

本の整理はそっちのけで Polya-Szego
(ポリア&セゲー)共著の問題集を読んでいるが,久し振りに眺めると面白い問題が目白押しだ。
比較的初等的で,面白そうなものをピックアップ。 \[
A_n=\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+2}+\cdots+\frac{1}{n+n} \] が $A=\log
2$ に収束することは,区分求積法(リーマン和)から直ぐに分かる。では,どれくらいのスピードで収束するだろうか。Part II の
No.12 によれば \[ \lim_{n\to\infty} n(A-A_n)=\frac{1}{4} \]
が成り立つらしいのである。
これは簡単に解けた。リーマン和は微小長方形の和なので,積分を長方形で近似したときの誤差評価をすればよい。関数$f(x)=\frac{1}{1+x}$は区間$0\leq x\leq 1$で単調減少かつ下に凸であるから,各長方形での誤差は,上からは弦で,下からは右端での接線で押さえることが出来る。
下からの和は,これまた区分求積法で上から押さえたものと同じ値に収束する。そういうわけでこの場合, \[
\lim_{n\to\infty} n(A-A_n)=\frac{1}{2} \lbrace f(0)-f(1)\rbrace
=\frac{1}{4} \] となる。

ステキなトポロジー入門書

Algebraic Topology: A First Course (Graduate Texts in Mathematics)

William Fultonと言えば、Benjaminから出ている代数曲線の入門書のイメージがあったので、代数的トポロジー?ふーん、というのが第一印象だった。邦訳を本屋で見かけた気もするが、スルーしてしまったような。

最近になって、原書の方を読む機会があって驚いた。代数的トポロジー(位相幾何)というと、三角形分割とか単体的ホモロジーとか、特異ホモロジーとか、CW複体とか、そんなイメージでいたのだが、この本は全然違う。低次元の具体的な場合を中心にして、微分形式や積分との関係、リーマン面や代数曲線、ドラム・コホモロジー、そんなことが次から次へと出てくるのだ。

著者によれば、これは歴史にも沿っているのだという。確かにガウスが複素積分を考えたときあたりから、道(パス)のホモトピーなどは始まったわけだが、それでも、第1章のタイトルが「線積分」というのはかなりインパクトがある。だって、代数的位相幾何の本ですよ。そのとっぱじめが積分なのだから。


ということで、ざっと目次を眺めてみる。第1部「平面上の微分積分」第1章 線積分。最初から微分形式の積分、閉形式($d\omega=0$)が完全形式($\omega=df$)になるか、とかと単連結性が関係してくる話。第2章 角度と変形 では、Winding数を積分で定義して(もちろん動機付けあり)、それが整数になること、そして、パスの持ち上げから被覆面(Covering surface)の話へ。第2部「Winding Number」は、いかにもトポロジーらしい話。第3部「コホモロジーとホモロジー」ホモロジーからでなく、コホモロジーから入る。しかも、ドラム・コホモロジーだ 😯 まあ、第1部からの流れではこうなるのだろう。とは言っても、0次元と1次元のみに限定みたいだから、抽象的でめげることはないだろう。言葉がちょっとばかり難しそうだってことを除けば。

このあと、Meyer-Vietorisの完全列やVan Kampenの定理、チェックのコホモロジーと、位相幾何らしくなる。何となく Bott-Tu の本をもっと易しくしたような感じ。とにかく2次元までなのが良い(笑)。

油断していると最後にリーマン面と代数曲線の話が来る。リーマンの双1次形式やヤコビアンとか、アーベル・ヤコビの定理とか。リーマン・ロッホの定理まであって、このあたりは完全に代数曲線論になってしまっている。

詳しく読まずにざっと眺めただけなのに、知ったふうに書いてしまった(汗)。これからちゃんと読んでみます 😉 。

素数が無数にあることの証明

たまたま読んでいたものに書いてあった証明。これは知らなかった。ユークリッドの証明もエレガントだが、これもなかなかだと思う。


自然数$a$に対して、$a$と$a+1$は互いに素であるから、$a(a+1)$に含まれる素因数の種類は$a$のそれよりも多い。よって、
\[ a_1=2, \quad a_{n+1}=a_n(a_n+1) \]
と定めると、$a_n$には少なくとも$n$種類の素因数をもつ。QED

書いてて思ったのだが、やっぱりユークリッドの方がシンプルか。

秋月康夫・輓近代数学の展望

輓近代数学の展望 (ちくま学芸文庫)


先日ジュンク堂に寄ったとき、秋月康夫「輓近代数学の展望」が筑摩文庫から再刊されていて驚いた。ちくま学芸文庫はこのところ数学・物理関係の名著の復刊が多くて素晴しいとは思っていたが、まさかこの本まで再刊されるとはと、ちょっと感慨深いのであった。

実はこの本持っていないのである。大学1年のとき、図書館から何度も借りて読んだ記憶がある。代数学とは言いながら、続編などは複素多様体の話だったりするのだが、代数幾何学ということで、これも代数に入るということなのだろう。むしろ、それが代数であるかはどうでもよく、著者が小平先生たちの業績を語りたくて仕方ないという感じで、圧倒されながら読んだものだった。もっとも、どこまで理解できたかは疑問なのだが :mrgreen:

ということで、かなり感傷にふけりながら手に取ったのではあるが、買ったものかどうか、これが悩むのである。とりあえず、一回は見送ったが、多分次回買うかな?

ところで、例の $x+\sqrt{x^2+A}=t$ と置く置換積分について、何故そうするのかという理由をこの本で学んだ記憶があるのだが、立ち読みでは見つけることが出来なかった。要するに、双曲線の有理パラメーター表示という話なんだが・・・。別の本だったのかなあ?

Asymptoteの練習 No.0005 テオドロスの螺線

Spiral of Theodorus (テオドロスの螺線)


引き続き、繰り返し処理。テオドロスの螺線 (Spiral of Theodorus) を描いてみる。
三辺が$1$, $1$, $\sqrt2$の直角三角形から始めて、斜辺の上に高さ1の直角三角形を次から次へと作っていくことで、この図形は作られている。

伝説(?)によれば、テオドロスはルート2から始めて、自然数の平方根が整数になる場合を除いて無理数になることの証明をルート17まで行ったという。この螺線における直角三角形の斜辺がちょうど$\sqrt2$, $\sqrt3$, … , $\sqrt{17}$ となっていて、これ以上進めると三角形が重なってしまうので、ここで止めたのだろうという話を何処かで読んだ。

繰り返し以外のポイントとしては、線分$OP_{i}$を90度回転させて長さを1にしたものを線分$P_{i}P_{i+1}$とすることで、次の直角三角形を作るところ。AsymptoteはMetapostと同様に複素数としての演算が出来るが、それ以外にも、アフィン変換がサポートされている。今回は rotate という回転を行うオペレーターと、単位ベクトルを作る unit という関数を用いた。

/*
  Asymptoteの練習 No.0005
  繰り返し処理
  Spiral of Theodorus (テオドロスの螺線)
  t0005.asy
*/

size(6cm,0); // 出来上がりの図版のサイズを幅6センチに設定

int n=17;
pair pO=(0,0);
pair[] pA;

pA[1]=(1,0);

for (int i=1; i<=n-1; i+=1)
  {
    pA[i+1]=pA[i]+unit(rotate(90)*(pA[i]-pO));
  }

for (int i=2; i<=n; i+=1)
  {
    draw(pO--pA[i-1]--pA[i]--cycle);
    markrightangle(pO,pA[i-1],pA[i],1.5mm);
    dot(format("$\mathrm{P}_{%i}$",i), pA[i],dir(pO--pA[i]));
  }

dot("$\mathrm{P}_{1}$", pA[1], dir(pO--pA[1]));

Asymptoteの練習 No.0004 正17角形を描く

正17角形

Asymptoteで繰り返し処理をしてみる。for 文の構文はC言語とほぼ同じ。繰り返しの変数は,その場で定義すればよい。ローカル変数ということなのだろう。簡単なところで正多角形を描いてみる。

/*
  Asymptoteの練習 No.0004
  繰り返し処理
  t0004.asy
*/

size(6cm,0); // 出来上がりの図版のサイズを幅6センチに設定

int N=17;
pair pO=(0,0);
pair[] pA;

for (int i=0; i<=N; i+=1)
  {
    pA[i]=(cos(2*i*pi/N),sin(2*i*pi/N));
  }

for (int i=0; i<=N-1; i+=1)
  {
    draw(pA[i]--pA[i+1]);
    draw(pO--pA[i]);
    dot(format("$\mathrm{P}_{%i}$",i), pA[i],dir(pO--pA[i]));
  }

以前 Metapost で同じようなことをしたことがあるが,頂点のラベル付けで添え字を自動で書き込むことが出来なかった。Asymptoteでは format 文が用意されているので,繰り返し処理の中で,変数 i を文字(数字)に書き下してからTeX側に送ることが簡単に出来るようだ。これは便利だ。