秋月康夫・輓近代数学の展望

輓近代数学の展望 (ちくま学芸文庫)


先日ジュンク堂に寄ったとき、秋月康夫「輓近代数学の展望」が筑摩文庫から再刊されていて驚いた。ちくま学芸文庫はこのところ数学・物理関係の名著の復刊が多くて素晴しいとは思っていたが、まさかこの本まで再刊されるとはと、ちょっと感慨深いのであった。

実はこの本持っていないのである。大学1年のとき、図書館から何度も借りて読んだ記憶がある。代数学とは言いながら、続編などは複素多様体の話だったりするのだが、代数幾何学ということで、これも代数に入るということなのだろう。むしろ、それが代数であるかはどうでもよく、著者が小平先生たちの業績を語りたくて仕方ないという感じで、圧倒されながら読んだものだった。もっとも、どこまで理解できたかは疑問なのだが :mrgreen:

ということで、かなり感傷にふけりながら手に取ったのではあるが、買ったものかどうか、これが悩むのである。とりあえず、一回は見送ったが、多分次回買うかな?

ところで、例の $x+\sqrt{x^2+A}=t$ と置く置換積分について、何故そうするのかという理由をこの本で学んだ記憶があるのだが、立ち読みでは見つけることが出来なかった。要するに、双曲線の有理パラメーター表示という話なんだが・・・。別の本だったのかなあ?

魔が差して短歌入門書を買ってしまった

いやあ、魔が差したとしか言いようがないのであるが・・・。

来嶋靖生 新版 短歌入門「採れなかった歌」

囲碁、将棋、チェス、いずれも敗戦から学ぶことが多い、と良く言われる。確かに、敗因を考えることが一番の勉強になることは経験上からも納得できる。本書はさしずめ、その短歌バージョンということだろうか。

それにしても、まさか短歌の入門書を買おうとは思わなかった。久々にジュンク堂に行き、川又先生の射影幾何の本(ポンスレーの定理の代数幾何的証明が載っていた)をカゴに入れ、下に降りて、最近ちくま文庫で再刊されたという 小西甚一「古文の読解」を探しに行く途中の出来事。

ふと棚を見ると、短歌・俳句のコーナーだった。へえ、こんなにこの分野の本ってあるんだ〜というのが最初の驚き。母が短歌を詠むので(どこぞの同人に入っていたと思う)、まんざら興味がないわけでもなかった。さりとて、百人一首すらろくに読んだことがないワタシである。普通はスルーするはずなのだが・・・。

熟年からの短歌入門、とかありそうなタイトルの本をいくつか手に取り、いやはや入門書ってものはこういう物かとか悪態をついていた 😉 ところで本書 (来嶋靖生 新版 短歌入門「採れなかった歌」) が目に留まった。手に取って、まず装丁とカバーの手触りが気に入ったところで、既にやられているのかも知れなかった。はじめにを読んで、明晰かつ論理的な説明に、おやおや、これはなかなかではないかと思った時点で、8割方敗北していたかも。それでも、しばらくは踏み止まったのだ。いまさら短歌の本なぞを買ってどうするのだ、と冷静なもう一人の自分が諭すのである。確かにそうである。しかしこの本は、装丁といい、活字といい、著者の人となりといい(いや、単に、はじめにと後書きで判断したのだが)、なかなか素晴しいではないかと。

ということで、買ってしまったですよ、短歌の本を。どうしたら良いのでしょうかねえ 😯 。

本の裁断サービス

もう10年以上も前になるが、仕事用の本や資料をことごとくスキャナーでパソコンに取り込んで、本自体は捨てているという同僚が居た。当時のことだから、スキャナー、パソコン、大容量ハードディスク、裁断機、諸々で100万くらい元手をかけたとか言っていた。ふーん、とか思っていたっけが、このところスキャナーなども安くなってきたようで、同じことをしている同僚がけっこう居るようなのである。ちょっと気になる。というか、ワタシもやりたい :mrgreen:

スキャナーは ScanSnap 1500M というのが良さそうなので、家内に打診してみるつもり。問題は裁断機である。手持ちの本の中には10センチくらいの厚さのものもあるし、家庭用の裁断機(それでも3万くらいするが!)では、一度には切れない。分解してからということになる。もう一つの問題は裁断機そのものが場所をとるということ。裁断機のレンタルってないかなあ〜と検索していたら、本の裁断サービスというのが見つかった。

本の裁断・解体サービス|高速スキャナー 無料レンタル|雑誌 漫画 蔵書 まんが マンガ 資料|スキャン 保管 保存 整理 処分|scanbooks.jp(スキャンブックス)

scanbooks.jp というネーミングも秀逸だと思ったが、名称から、てっきり本のスキャンもやってくれるのかと思ってしまった。著作権の関係でそれは出来ないみたいだ。本の裁断と、スキャナーのレンタルをしてくれるらしい。こういうとき、法律ってアホらしいと思う。本のスキャンを仕事としてやってはダメだけど、スキャナーのレンタルは問題ないから、それを使って自分でやれってことですな 😉 。

利用するかもしれないので、とりあえずメモ。一冊当たり110円で裁断してくれるらしい。段ボール一箱分くらいを裁断してもらえば、送料はかかるものの、手間を考えればリーズナブルかなと思う。

[ 追記 ] フェデックス・キンコーズでも裁断してくれるらしい。

PC Watch 山田祥平のRe:config.sys

ただし、背の丸い本など手間の掛かるものはそれだけ料金も高くなるみたいだ。池袋西口にも店舗があるから、背のフラットな本を数冊裁断するときには、こっちの方が手軽かも。

四色問題

ロビン・ウィルソン「四色問題」新潮社 (Robin Wilson, Four Colours Suffice, How the Map Problem Was Solved)

先週、つい魔が差して(笑)購入してしまったのが、Robin Wilsonという人の「四色問題」(原題は、Four Colours Suffice)。平面上の地図は必ず4色で塗り分けられるという定理(4色定理)が証明されるまでの、興奮と落胆(笑)のストーリー。主だった登場人物は次の通り。

フランシス・ガスリー (Francis Guthrie) 4色問題の発案者。イングランドの地図を塗り分けている時に、4色あればどんな地図も塗り分けられることに気付く。

ド・モルガン (De Morgan) フランシス・ガスリーの弟から4色問題を聞き、興味を持つ。多くの数学者にこれを知らせ、4色問題が世に知られるきっかけを作る。

ケイリー (Arthur Cayley) 忘れられていた4色問題を復活させ、これに関する論文を初めて書く。各頂点から出る辺が3本の場合(3枝地図)に限っても一般性を失わないことを注意した。

ケンプ (Alfred Kempe) 4色定理の証明を発表する。実は間違っていたが、11年間も気付かれずにいた。証明には失敗したものの、後の発展のきっかけとなる重要な手法(Kempe chains など)を開発した。

ヒーウッド (ヘイウッド ?) (Percy John Heawood) ケンプの証明に欠陥があることを発見する。ケンプの証明を修正して、5色あれば十分であること(5色定理)を証明する。また、平面・球面以外での地図についても考察し、示性数(Genus、穴の数、例えばドーナツ面のときは1)がpの閉局面上の地図を塗り分けられる色の個数についての公式を発見した。

ヴェルニッケ 不可避集合(どんな3枝地図も必ず含まないといけない配置の集まり)の概念を導入し、幾つかの不可避集合を発見する。

ハインリッヒ・ヘーシュ (Heinrich Heesch) 不可避集合を求めるために、放電法(discharging)を考案する。これがその後の発展の基本的道具となる。

ウルフガング・ハーケン (Wolfgang Haken) ケネス・アッペル (Kenneth Appel) と共同で、4色定理を証明する。放電法を改良することにより、およそ2000個の可約配置からなる不可避集合の存在を示した。検証にはコンピューターが使われた。この結果として4色定理が成り立つことが言える。

最終的にはHakenとAppelによって証明されたのだが、コンピューターを何千時間(?)も使って検証したというその証明には、多くの人が落胆したのだった。

この本は、4色問題についてまったく知らない人でも楽しく読める素晴らしい本。数学の知識もほとんど不要。定理らしき定理は、オイラーの多面体定理(V-E+F=2) ぐらいしかないし、これもちゃんと説明されている。中学生でも読めちゃいますね、これは。

4色定理の証明はとっても難しいが、5色定理ならそれほど難しくなく、きちんと説明されていて嬉しい。大分前にクーラント、ロビンズの「数学とは何か」で5色定理の証明は読んだはずだが、まったく覚えておらず(笑)、今回初めて理解した気分。6色定理になると、さらに易しい。6色定理は「隣国は5つだけ」レンマから直ちに出るが、このレンマ(補助定理)も、オイラーの多面体定理 V-E+F=2 から簡単に示される。

こんな感じで、いきさつやお話だけでなく、具体的に数学の内容もやさしく、かつ、きちんと説明されている。特に、可約配置、不可避集合、放電法、といった基本的概念が分かりやすく説明されていて、HakenとAppelの証明法の基本方針が理解できたのは良かった。いや、素晴らしい本ですよ。

漢文こばなし集

ちょっと気の利いた 漢文こばなし集

2ヶ月ほど前だったか、ジュンク堂で見かけた。気軽に読める本。あまりに気軽に読めそうなので、買うのをよそうかと思ったくらい(笑)。出版社が大修館で漢文の組版がとてもきれいだったこともあり、迷った末に購入した。

このところ鞄に常時入っていて、電車などで読んでいるのだが、そういう用途には最適。さすがに朝の通勤時に岩波全書の「漢文入門」を読むのはいささかつらいものがある。

全部で23話の、それこそ「ちょっと気の利いた」小話ばかり。話題や出典も多岐に渡っていて、どれも面白い。実は最初、著者のコメントというかエッセー風の解説が、少々うとましく感じたのだ。多分、こちら側が「漢文学習モード」になっていて、いいよ、そんなこと、なんて思っていたに違いない。不思議なもので、訓読の仕方とか、そういうことをあまり気にせず、それこそ、漢文であるかどうかなんてどっちでもいい、という感じで読んでいると、著者ののんびりとした語り口がすんなりと受け入れられるのであった。

伝説の参考書

高田瑞穂著「新釈現代文」(ちくま学芸文庫、復刻版)

高田瑞穂著「新釈現代文」の復刻版を購入。いやあ、魔が差したというのも変だが、1ヶ月程前に復刊ドットコムから復刻の知らせがあって、ふーん、「伝説の参考書」かあ・・・と、ついポチッと押してしまったというのが真相。すっかり忘れていたのだが、昨日宅配便で届いた。

正直言って、高校生の頃は現代国語は苦手だった。興味も持てなかった。入試で200字以内で感想だったか要約だったか、そんなのがあるというので、その練習みたいなのが学校のテストでも出るのだが、内容はともかく、いきなり書き始めて198字ぐらいでピッタリ収めるのが得意 :mrgreen: とか、まあそんな程度の低レベルなのがワタシであったのだ。

何をいまさら、と思いつつも読んでみると、これが存外と面白い。はしがきですっかり著者の虜になってしまった(笑)。この人は素晴らしいと思ってしまう。瑣末な技術論ではなく、著者が大切だと考える「たった一つのこと」を伝えるために、この本は書かれているのだ。うーん、素晴らしい。

まだ全部は読んでいないが、感想を。分野は違うが、こういう本を書いてみたいものだ。いや、ホントに。

三国志演義

三国志演義4(井波律子訳) ちくま文庫

原稿の方も目処が立ってきたので(と言いつつ、まだ九十里だが、笑)ちょっと息抜き。先日買った三国志演義をパラパラと読んでいる。翻訳もいくつかあるようだが、ちくま文庫の井波律子さん訳を選んだ。連続時代劇風に、毎回毎回お題があって読みやすい。一回分の分量もほぼ一定しており、最後に期待を持たせつつ次回に続くという形式が、なかなか楽しい :mrgreen: 。例えば、第52回は「諸葛亮(しょかつりょう)、智もて魯粛(ろしゅく)を辞(こば)み、趙子龍(ちょうしりゅう)、計もて桂陽(けいよう)を取る」というタイトル。最後は「はてさて諸葛亮はどんなことを言い出すのでしょうか。まずは次回の分解(ときあかし)をご覧ください。」で次回へと繋ぐ。

おまけに中国中央電視台版のテレビ番組を観ているものだから、頭の中で映像がかぶるというか、文庫版の台詞までがテレビの俳優さん(と吹き替えの声優さんの声)で聞こえる始末(笑)。これはこれで楽しいのだが、病膏肓の様相かも 😉 。

それにしても、この歳で三国志にはまるとは思わなんだ。人に話すと「レッドクリフですか?」と言われるのが少々いまいましいかも 😉 。否否なのである。そっちじゃないんだけどなあ。

David Cox のガロア理論の本

またぞろガロア理論の入門書かあ、と思いつつも、著者が David Cox ということもあり、念のため調査。紀伊國屋書店の紹介ページでは Google プレビュー という機能があって、中身をかなり立ち読みできる。目次を眺めていると、おお〜、レムニスケートの等分に関するアーベルの定理が紹介されている。さすが Cox である。期待を裏切らないねえ〜。

一番最後の第15章はタイトルがずばり「レムニスケート」である。レムニスケートの定義から始めて、ガウスが円周等分したのと全くパラレルにレムニスケートの等分が考えられること、それに関するアーベルの先駆的仕事を紹介している。一般の楕円関数ではなく、レムニスケート関数に限定し、加法定理、倍角公式など。倍角の公式は整数倍だけでなく、「ガウスの複素整数」倍に対しても作ることが出来る。これが所謂虚数乗法。これを利用して、レムニスケートの等分点を添加した体のガロア群がアーベル群であることが示される。途中で、ガウス整数を係数とする多項式についての、アイゼンシュタインの既約性定理なども原典を引きながら紹介される。もちろん表現方法は現代的なのだが、内容においてガウス、アーベル、アイゼンシュタインが何をどのように導いてきたのかが良く分かるような説明になっているようだ。まあ、内容を大体知っているから、立ち読みで分かったようなことを書いている(汗)わけであるが。

それにしても、相変わらず、証明の細部を章末の練習問題に委ねるという手法が取られていて、ちょっと複雑な気持ち。自力で解ける分には問題ないのだが、時としてそうでないこともあるしなあ。

培風館・新数学シリーズの組版

どこで聞いたのか、あるいは読んだのか、すっかり忘れたのだが、培風館の新数学シリーズの話。曰く、あのサイズであれだけの内容が可能な秘密は組版にある、と。漢字に比べて仮名が小さく組まれているのだと言う。

そんなことがあるかいな、と思いつつ、本棚から幾つか取り出してみた。ホントだ〜 😯 😯 😯  確かに仮名の活字は漢字に比べて小さい。

山内恭彦、杉浦光夫「連続群論入門」培風館・新数学シリーズ18
山内、杉浦「連続群論入門」p.62

どれでも同じなのだが、写真は杉浦先生の「連続群論入門」。あ、山内・杉浦共著でしたっけね、一応は :mrgreen: 。仮名は小さいというか、幅が狭いという感じ。なるほど。それで狭い版面に多くの情報を詰め込めるのか・・・。うーむ、恐るべし培風館。

他の出版社でこんな工夫しているところってあるんでしょうか。培風館も他のシリーズではやっていないみたいだし。それとは別に、「連続群論入門」って今は絶版なんですね。アマゾンで調べたら、中古で15000円だったので、のけぞりましたよ(笑)。

LagrangeのRecherches d’arithmétique

Gaussの2次形式の合成を特別な場合にLagrangeが既にやっているらしいのであるが、それの確認とLagrangeがそれをどうやって導いているのかを知りたくて、Lagrange全集を探索中。さしあたっては、論文 Recherches d’arithmétique (数論研究) をざっとでも見ておくかな。

ということで、Internet Archive で検索。第3巻の終わりの方に、数論研究はあった。

まだダウンロードしてなくて、ネット上で少し読んだだけだが、簡約形式の計算がかなり詳しくされていて、表の形でまとめられている。合成の計算は見当たらないような・・・。また時間を見つけてゆっくりと読んでみよう。